ねまる

ステート・オブ・プレイ〜陰謀の構図〜のねまるのレビュー・感想・評価

4.6
長い長いこと観たいリストに入ってた作品。
ハリポタやファンタビの、デヴィッド・イェーツ監督作。ハリウッドでも映画としてリメイクされているけど、ドラマのが評判良いので気になってたんだ。

ストーリー、展開、編集、そして役者陣のパフォーマンス全てピカいち。
2つの事件が繋がって、新たな証拠が現れて、進んでいる暗闇の中で一つずつ一つずつ次の扉を開いていくようなスリルがある。
そのドアを開けることでどんな影響があるのかあえて考えないようにしているかのよう。
同時に、後ろで次々戻るための扉が閉ざされている、後戻りはできないという感覚もあるのが面白い。

このドラマの珍しいところは、容疑者であり、被害者の不倫相手であり、政治的中心人物であるスティーブン・コリンズの目線がカルと並んでメインとして動くところ。
とても、敏感で、繊細な感情の行方が、この事件の真相に近づくにつれ、どう変わっていくのか、彼を見ることで、傍観でいられない。

仕事は出来るが人たらしで純粋なもう1人の主人公カル・マカフリー。真相を追いかける記者で、後頭部を後ろから追うカットの多いいわゆる主人公ではあるが、ヒーローでは無い。ある意味とても人間らしく描かれるところが堪らなく好き。

2人を中心に、健気で勇敢な若手記者をケリー・マクドナルドが、ユーモアのある頼れる上司をビル・ナイが、このシリアスさの中で笑いどころをマーク・ウォーレンが、調子は良いが優秀な記者をジェームズ・マカヴォイが演じていて、全員がその役に合った、そして最高のパフォーマンスをしているところがこのドラマの本当に凄いところ。
真相だけでなく、何度見ても楽しめる作品なのは重厚に折り重なる演技の層だと思う。


-----ここからネタバレ-----


ラスト15分。
スティーブンの告白を経て、
カルの泣くシーン、そして印刷所での表情。

これでこのドラマの評価が3段階くらいあがった。
政治サスペンスとして、新聞記者が政治家の汚職を問う話だけど、同時にその書き手であるカルも無傷では居られない。
証拠の出所を守るために逮捕されることも、デラを守るために命を狙われる囮になることも、正社員ではなくフリーになることも、何にも厭わず出来るのに、
心から信じていた友達の本性を知ったこと、そして自分も同類だと知ったことはあまりに辛くて、
いつもみんなの集まる編集長の部屋に入れなくて、社内なのに涙が溢れてきちゃって、そのまま壁にぶつかるようにして、感情の堰が崩れちゃうあの場面。
後頭部から撮るショットが多かった分、カメラが後ろに下がり、泣きながらこっちに向かってくるカルが、真っ直ぐではいられず後退しているように感じて辛い。

そして、ラストシーン。
もう後戻り出来る扉のなかった出口の先に、ポツンと放り出され、ただその結果を見つめるあの表情。
無情に回る印刷機、自らの手で自らが掴んだ結末を受け入れるようにして外したヘッドホン。
カラカラと回るあの余韻が、観たものの心にも刻まれる。
ねまる

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