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SHUT UPのgcpのネタバレレビュー・内容・結末

SHUT UP(2023年製作のドラマ)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

かわいそうな人
そう言われて、イラッとこない人はいないでしょう。お金がないことは可哀想かな?コツコツ努力する姿は可哀想かな?

「相談してほしかった」「相談したら、やめてって言うでしょ」まるで親子みたいな会話をする彼女たち。寮で暮らしていて、ひとりぼっちじゃなかったのは不幸中の幸い。だけど、あなたがわたしがみじめにならないようにと、重ねた嘘は自分にしかわからない場所の傷を増やしていく。守りたかったのは最低限の尊厳な筈なのに「こうするしかなかった」と、言葉では説明できない複雑な気持ちに蓋をして。4人の内、誰かが冷静だったり知識があっても、まだ様々な分別がつかない大学生が出した苦肉の策はどれもこれも危なっかしくてヒリヒリした。未熟者だからこそ失敗や経験が必要なのに、この社会では取り返しのつかないことが多すぎるよ。取り返そうもんなら大金が必要だなんて、泣き寝入り前提なのだ。本来彼らに手を差し伸べるべき大人たちも、若者の純粋さを利用しては「こうやって生き延びなきゃ」と無言の圧力で搾取するばかり。
そういう理由でとにかく悠馬が、かわいそうなひと。人の意思を軽視するようになったのは、少なからず彼に向けられた親の無関心が影響している。さみしいね。内部生への憧れを持つたけるを駒としか思っていない歪な友情も、彼の目に映る世界が反映されているのだろう。自由になりたかったのは悠馬も同じだったはずなのに。
だからね、今世間を賑わせている性暴力について、テレビやSNSで部外者がこれからもずーーーっとやんややんや言い続けるならば、男女かかわらず未来について語るべきです。ニュースを見ていまいちピンと来ない人たちも、告白した人たちに「加害者を陥れたいわけじゃない、こらしめたいわけじゃない」と言う想いがあるかもしれない可能性について、このドラマを観たら少しは解るのではないかな。恵の気持ちが丁寧に丁寧に描かれているから。
告発された側が、やっぱりさらっと事実無根というワードを使う違和感も、悠馬という人間を知ればわかる。無知からくるものだと。
だからどうか未来の少年少女が「こうするしかなかった」だとか「そういうものだと思ってた」と加害者になったり事件に巻き込まれませんようにと。教育の在り方など、議論すべき点はたくさんある。たしかに当事者間では、加害者の事情や理由を考慮する必要はまったくないと思うけれど、また同じことが起きないようにするためには個人でなく社会の認識をそろえて法律を変えなきゃならない。そんな途方もない道のりに呆然としてしまう隙を与えないような、ぐっと刺さるドラマだった。仁村紗和、とてもよいです。
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