トケグチアワユキ

苦い涙のトケグチアワユキのレビュー・感想・評価

苦い涙(2022年製作の映画)
4.7
なんとまあ傲慢で、呆れるほどお下劣な映画監督が主人公の悲喜劇。
映画の中でうっすらと、いわゆるハリウッド大作を揶揄するようなセリフも出てくるけど、実にフランス映画らしいシニカルなストーリー。
今どきこんなステレオタイプなもの言いしたら、フランス方面から大バッシング受けそうだけど、とはいえそのフランスで制作された、紛うことなきフランス映画なのも事実でさ。これ伝統じゃん、あの国の。
私はといえば、アメコミヒーローも歌う氷の魔法使いも、ましてシンなんちゃらも戸締まりする小鳥もまったく必要としていない。
何ならこういう映画ばっかり観ていたい。
えへへ、あはは、と強烈キャラクターの下世話さと異常行動を高みの見物状態。

ぜんぜん複雑なところはないので、別に明確な帰結や大げさなカタルシスがなくても問題ないという方なら、何の前情報を入れずに85分、ストーリーと演技にじっくり向き合って楽しむのがよろしいかと。
2022年(制作年)の今どきセックス・ドラッグ & シャンソンな新作をつくっちゃうフランソワ オゾンがいるフランス映画界が私は大好き。
(ちなみに映画の舞台となっているのは1978年のドイツ ケルンのアパルトマン。部屋から一歩も出ないので場所なんてどうでもいいけど)。

こういう映画は大きな会社の会議室からは生まれない。
投資の対象として権利を債権化して小口で売りさばくことなどできないからだ。