トケグチアワユキ

大阪古着日和のトケグチアワユキのレビュー・感想・評価

大阪古着日和(2023年製作の映画)
1.1
こりゃトンデモ映画だね。

「光石研の東京古着日和」という深夜ドラマからの派生系として、さらば森田を主演にし、大阪を舞台にした劇場版。
BSフジ4Kでテレビ鑑賞。

別に文法を無視してたって、そこに意図を理解させるだけの表現があれば、私はその映画を評価したいとは思うし、面白がるだけの感性はあるつもりだ。
だが、この映画は違う。
〈てにをは〉という文章の作用をわかって無視したり破壊しているのではなく、そもそも〈てにをは〉ナシでわかってもらえると観客に甘えているのだ。

テレビドラマ版をテレビで観てる分には、古着屋のカタログとして観ることもできたが、これを映画館で観ると考えると気が遠くなる。
まったく何も伝わって来ねぇぇぇぇ!!!!

脚本というかストーリーは一応ある。
古着屋のかわいいアルバイト店員に声をかけデートしてみたがよい感触はなく、最後のチャンスにウン十万のヴィンテイジスウェットシャツをプレゼントしたがカスリもせずにプレゼントだけ持って逃げ切られたっていう、まったく歯ごたえのない話。
まあ、それはこの映画の最も重要なエレメントではないのかも知れない。目をつぶろう。
問題はこの映画のタイトルにもなっている古着の見せ方だ。

完全にChampionのスウェットシャツに焦点を絞っている。
確かにボッロボロに擦り切れたヴィンテイジのスウェットシャツが何十万もの金額で取引されている事実はあるだろう。
現物らしきものは画面に出る。
セリフでタグの説明もあるにはある。
だったら、そのタグを写さなくていい理由はひとつもない。
襟めくるだけだろ?
何でインサートひとつ撮影できねぇんだ。
バカなの?

森田の父親が実際に経営するそば屋で、実際の父親を出演させ、ヴィンテイジらしきLevi'sを履かせて「そんなんもってたん?」「さあ?」「もしかしてビッグEか?」「知らん」「赤耳ですかね?」「そやなぁ」(シーン終わり)ってオイオイオイオイ。
ここは喜々としてLevi'sのウンチク語るとこでしょう。
なぜ、普通に量販店で2万円の現行商品を買うのと違うのか。
なぜ古着屋だと高いのか。
ここでわかってもらわなくて、どこでわかってもらうのよ。
タグ見せようよ。裾めくろうよ。着て見せようよ。

監督したのは、雑誌のライターからエディターになった人らしいけど、せめてもうちょっと映像の文法を理解してないとなぁ。
雑誌だって活字だけじゃ伝わらないから、拡大したディテイルの画像つけたり、表やグラフつけたりするわけじゃん?
映像もいっしょだよ。
インサート撮ったり、遠景で歩かせたり。

正直言って、監督した人の自己顕示欲と売名行為以外なんにも感じられなかった。
古着のよさじゃなく、高価さしか伝わってこなかった。
古着はChampionとLevi'sだけじゃないし、もっとワンダーにあふれてるじゃん。
ハイブランドのドレスの上にジャージ羽織っちゃうようなことも可能って、希望のかたまりじゃん?
なんかこの映画が、古着を敬遠させちゃうんじゃないかと心配になる。

追記
あ、それとね、出てくる食のセンス、最悪だと思う。
わざわざ白っぽいもの選んで着せて、カレーうどんだかそばだか。
他もガキの舌しか持ってないのがよくわかる。