一休

モリコーネ 映画が恋した音楽家の一休のレビュー・感想・評価

5.0
予てから言うように、うちは両親共に映画好きで、貧乏なのにサウンドトラックのレコードが流れている家であった。
小学校1年生にして、数曲のマカロニ・ウエスタンの曲を口笛で吹けるようになったのは良いのだが、中にとても吹きにくい曲があることが分かった。
主メロディーを吹いているつもりでも、その裏で必ず別のメロディーが流れており、しかも単なる純音さえも、メロディーに絡んで旋律を成しているので、普通に唇で吹く口笛だけでは足らず、小学5年生のころには、歯笛と唇、口腔と舌を使ってモリコーネの曲を吹くようになった。
現在でいうところの、ボイパというやつだ。
なんて、曲をオイラに与えたんだ!!(笑)
そのまま映画好きになったオイラは、TVの映画劇場はほとんど必ず見たし、小遣いの許す限り札幌のたぬき小路や須貝ビルへ足を運んだ。
そして、好きな映画の曲は口笛で吹くことにしていたのだが、曲を吹いていて、場面が脳裏に浮かぶのはやはりモリコーネの曲が一番であった。
それぐらいにオイラの中で特別になったモリコーネのスコアは、その後の映画鑑賞にも影響を与え、【エスピオナージ】、【ミラノ殺人捜査網】、【オルカ】、【惑星からの物体X】、【パリ警視J】ときて、【ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ】~【ニュー・シネマ・パラダイス】とくる。
2004年、2005年年に来日コンサートを開催した時には、小泉鈍一郎元総理の入場が邪魔に感じるぐらいに、マエストロに釘付けだったな~。(笑)
今回のドキュメンタリー映画では、本人のインタビューの他に、マエストロに関わり、映画への関わり方を変えられた映画人が山のように出演していた。
皆も言っている様に、モリコーネの楽曲は、メインメロディーだけで成り立っていない。
【シシリアン】や【マッダレーナ】の様に、第一音から始まったメロディーの裏で、必ず他の音があり、それがいつの間にかメロディーラインを作り、そして2つ、3つのメロディーが重なって一つの作品を作り上げていく。
音楽的には「対位法」というのだそうだ。
しかし、歴史を学んだ者として言わせてもらうなら、まさしくこれこそが、人と人の関わりである。
人は、個人個人で持っているリズムもメロディーも違う。
その異なるメロディーが、微妙にハーモニーを作り、当人同士が心地良い時に関わりが深くなるのだ。
そんな楽曲を聞きながら、映画を観るのだから、後で楽曲を聞いた時に、映画の場面どころか、映画を観たその時の自分の様子さえも、まざまざと脳裏に蘇るというものだ。
このインタビュー内では、【ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ】の『デボラのテーマ』で、オーボエの長く取った音を賞賛していたが、それは【続・夕陽のガンマン】の『黄金のエスクタシー』で、オーボエの第四音を長ぁ~く取って、ついに墓場までやってきたテュッコの心情を表している。
この曲はまた、イーライ・ウォラックの走り方にピッタリなんだなぁ。(笑)
映画開始の5分で、観客の耳を試すように、3秒だけ顔を映さずに声だけ聴かせる場面があった。
そう、クリント・イーストウッドのインタビュー場面だ。
耳が良ければ、あそこは「イーストウッドか。」とすぐに気付く所だっただろう♪
しかし、残念なのは、この映画に中国だけが金を出していたということだ。
こういうモノに、日本は金を出さないよな~。😑
いっそ、菊池俊輔、渡辺宙明、山下毅雄、小林亜星などを扱った【アニソンを作った男たち】という映画を、がっつり金をかけて作ってくれないかな~と思う一休なのであった。
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