一休

アステロイド・シティの一休のレビュー・感想・評価

アステロイド・シティ(2023年製作の映画)
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こういう劇中劇を作りたがる人って、一定数いるのは知っているのだが絶対的に難しい。
オイラが知っている中では、【サイレント・ムービー】とか【プロデューサーズ】を作ったメル・ブルックスが一番上手で、不思議な顔の男優と、目立つ美人女優を絡めることで、ストーリーテーラーにリズムを与え、場面を〆るために有名俳優を配するという手法だ。
前者では、マーティー・フィルドマン&ドム・デルイズ、アン・バンクロフト、バート・レイノルズやポール・ニューマンを配していたし、後者では、2006年の作品に、マシュー・ブロデリック&ネイサン・レイン、ユマ・サーマン、そしてウィル・フィレルを配して作っている。

この作品も、ジャイソン・シュワルツ&トニー・レヴォロリ、スカーレット・ヨハンソン、そしてトム・ハンクスという同様の布陣で作られている。
しかし、何が怖いのか、他の俳優にしゃべらせ過ぎて、誰の、何のストーリーなのか全く分からなくなっている。
カメラマンと女優のストーリーでもないし、天才少年少女のストーリーでもない、隠蔽したいアメリカ軍のストーリーでもないし、もちろん宇宙人のストーリーでもない。
しかも、それだけでは不安だったのか、【バードマン あるいは無知がもたらす予期せぬ奇跡】でアカデミーにノミネートされたエドワード・ノートンを「劇作家」として登場させていたりするので、この劇の視点がどこにあるのか分らなくなっている。
その割に、1955年の場面であるのに、今どきのポリコレを取り入れざるを得ないもんで、黒人司令官だったり、朝鮮戦争が終わったばかりの朝鮮人父子を出したり、決して美人ではない東洋人を出したりしている。(笑)
黒人司令官なんていうのは、【マース・アタック】なんかでも出ているのだから、何の驚きもない。
この映画は、【サイレント・ムービー】でたった一言、セリフを言わせるマルセル・マルソーとか、【プロデューサーズ】で美人なのにバカという役を演じるユマ・サーマンとか、そういった驚きが一つもない。
シャワーを浴びてガウンを羽織っているスカーレット・ヨハンソンが、そのガウンを落として、一瞬鏡に映るというシーンがあるが、それだって本人ではなかろうという感じだ。
映画や映像作品が、何でもかんでも、分りやすくセリフで説明をしなくちゃならないという事はないが、そのストーリーの場面を納得させる事ぐらいはしなければ、心になにも響かない。
結局、この映画は、作家や演出家の場面で終わるのではなく、アステロイド・シティーの場面で終わる。
じゃあ、なぜこの映像に作家が必要だったのか、全く理由がわからない。ww

この映画で印象的だったのは、ガウンが落ちた時に鏡に全裸を映したスタンドインの女優さんだけだ。
むしろ、その為に、スカーレット・ヨハンソンはゴールデン・ラズベリー賞に選ばれるだろうと思ってしまう一休なのであった。
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