さらしな

ゴジラ-1.0のさらしなのレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
4.3
初のIMAX。大迫力の映像と身体の芯へズシンとくる音響、やはりお値段が少し高い分だけ良いのだなぁ、と当たり前のことを再認識。
かなりヒューマンドラマ要素の強い作品だと前評で聞いていたが、確かに、これはゴジラ作品というよりは、ゴジラ要素のある戦後もの。勿論、絶望的なほどに圧倒的なゴジラに立ち向かう人間の知恵と勇気の物語であり、作中設定の「戦後間も無く軍備もない冷戦の影響で他国の支援もほぼない中でいかにしてゴジラに立ち向かうか」は大きな見所のひとつだ。軍がないので民間人が立ち上がるわけなのだが、この時代の青年壮年世代は「戦争の生き残り」である。そこに、「民間人の寄せ集めだが元軍人ばかりなので戦える」というリアリティがあり、「戦争を生き抜いた(生き抜いてしまった)」人たちの心を戦争から引き戻す「最後の戦い」でもある。
特攻隊員に選ばれながらも嘘の申告をして死を免れた主人公敷島は、着陸した島(戦闘機の整備員しかいない)でゴジラの襲撃に遭う。島で唯一ゴジラに対抗できるかもしれない手段ががあった(唯一の戦闘員だった)敷島は、恐れをなして逃げ出し生き延びるものの、その部隊は壊滅することになる。故郷には帰れたが両親は被災し亡くなっていることを知り、失意のどん底に落とされた敷島は、偶然出会った、血のつながらない赤子を世話する女性典子となし崩し的に共同生活をすることになる。
敷島は典子と赤子のために必死に働き、裕福な生活ができるようになるが、心は戦場に置き去りのまま、悪夢にうなされる日々を送る。
とにかく敷島の心情が辛い。そして、敷島以外の登場人物、みんな辛い。我が子を亡くした親、脱出装置のない戦闘機に乗って戦場へ赴く軍人たちを見送ることしかできなかった技術士官、「お国のために死ね」と教えられて育ってきたのに戦場へ行くことができなかった若者、それぞれの背景が詳しく語られることはないが、戦争によっていかに多くの人が辛い思いをしたか、察するに余りある。
月並みな感想になってしまうが、やっぱり人は辛くても生きていかなきゃだし、戦争は絶対に駄目、ということを改めて考えさせられた作品。
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