新木

パスト ライブス/再会の新木のネタバレレビュー・内容・結末

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

各方面から高評価を得ている本作。自身もA24配給というところで観たわけなのですが、誰が面白いからとかどこが制作したからといったところで鑑賞するかどうかを決めるのからいい加減逃れたいというのは正直なところであり。かと言ってますます玉石混交感のある膨大な量のコンテンツのなかからひとつを選んで費やす2時間はできるだけ良い時間にしたい(この2点なければそこまで良くはないメインビジュアルにスルーしてしまいそう)というのも正直なところであり。
結論、良作でありましたし、最後の残し方なんて秀逸なのですが、自身含めて世間的に良いとみながこぞって褒め称えているものを良いものでしたと右倣えする感じが気持ち悪いと思ってしまう麗らかな春でございます。

12歳から24歳、36歳。どうしてこんなにも初恋が人生に占める割合というものは大きいのでしょうか。本作においては両想い、かつ好きなまま離れ離れにあるというロマンティックさ。これらが要素として加われば、もはや来世までなにかしらのかたちで継承されてしまうにちがいありません。ただ、男側の想いが時間とともに勝手に良き方向に醸成されていくのはわかるのですが、女性側も果たしてそうなのでしょうか。当時どれほど惚れ込んでいたのかはわかりませんが、劇作家として刺激的な日々をアメリカの地で過ごしている彼女にとって、彼は仕事で必要な中国語を学ぶ以外に韓国から出ることなくやりたいことも特になさそう退屈な人物として映らないものなのか。実際、24歳のときにアメリカにきてくれなかった行動力の無さが36歳の再会につながったことにはフィクションさを強く感じました。そして会ったときの会話も、個人的にはひどくつまらなく、終始自信なさげに応答する彼に対して容姿以外にどこに魅力を感じたのでしょうか。夫も同席したバーで平気で彼女と韓国語で話す彼の振る舞いにもおいおいそういうところやぞと。アーサーもすごいね。

兎にも角にもきっとノラはアメリカに移住した当時によほどの不安を感じてのいまなお褪せないヘソンへの矢印なのかなと感じましたし、それは愛や恋や友情とも違う、ふたりの間にしか生まれることのない、言葉にするのも野暮なものなのかなと。
画面左に向かってヘソンを見送りに、画面右に向かってアーサーのもとに戻りその胸を借りて泣く。30代も後半を過ぎた人々にとっては特に、過去の自身の体験を手繰り寄せては近い箇所を見つけて「これは自分の物語だ」と語りたくなりますが、それで収めてしまっては寂しいすよね(僕には小学2年生のときに広島に行ってしまった初恋のあの子と30歳前に再会しましたが、良き思い出が更新できました
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