ASHITAKAAkino

ペナルティループのASHITAKAAkinoのネタバレレビュー・内容・結末

ペナルティループ(2024年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます


2024年映画25本目

被害者の加害性と加害者の被害性が露悪的にコーティングされたブラザーフッド映画。
ある意味とても現実的なループもの。『Black Mirror』のような世界。
スリラー・サスペンスだった趣きはミッドポイントの前後でコメディチックなドラマとSF要素のある現代劇に変換される。実包(その表現と所作は非常に自然で◎)とお決まりの誤射のくだり、笑う。賞の経緯からも脚本を勉強した人の脚本で、三幕構成?でガラリと印象が変わるのがこの作家の持ち味なのかなと。

キャスティングはハマっていて、特に伊勢谷友介。逮捕されて警察に絞られても(元アイドルとかと比較しても)誰も売ってなさそうなのすごくない?と思ったりもしたけど、散々キャンセルされての復帰作が何度も殺されまくる映画という、監督わかってるし、逆にオファーを受ける必然性も彼にあったのだろうと想像。
憎悪や復讐心が持続しないという示唆にも。対話による落とし所は過去の復讐もの、タイムループの枠を超える。その復讐の先への想像を促す良作でした。これまでの映画は被害者をあまりにも描き過ぎていた部分はあったかもだけど、観客は主人公を被害者としては見れないようにデザインされている気も。そんなに二元的ではないし、いとも簡単にその関係性が反転する。

想起したのはブラックミラーと『その夜の侍』、国内映画というより、突飛なアイディアを元にした海外のSF文学のよう。現代のオーウェルと言うと大袈裟だけれど、これは警笛でもあり、予言でもある。そう予感させるような作品。『人数の町』もそうでしたが、管理社会や管理組織を偏執的に描くの好きそう。そしてそこにあるバグも。
水をやらなければ枯れる植木のある世界で我々は生きている。刺す相手に実体がある生身の人間だという想像を。手を握る、礼を言うシーン、木を描くシーン、好き。ラストは現実に戻り、リアルな痛みを主人公が体感して終える。

館数は少なめ、ミニシアターばかりだけど、わざわざ観に行って良かったです。
あと尺も100分に満たないのは計算されていて、かなりシーンを削られたのかなと想像。
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