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哀れなるものたちのこの名前は既に使用されていますのネタバレレビュー・内容・結末

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

投身自殺を図った、子を身ごもった女性。彼女は命を落とすが、天才外科医の手術によって子供の脳が移植され、蘇ることに……。
なによりエマ・ストーンの演技力に圧倒される。『最後の誘惑』(スコセッシ)に出演した際には、キリストというより悪魔の役だろと言われてしまったウィレム・デフォーですが、今作ではマッド・サイエンティストなのか良識ある「父親」なのか。
家に閉じ込められていたベラ(エマ)が「世界」を見て回るというストーリーには、女性の家庭からの解放、自立という物語を容易に想起しましたが、単純にオデッセイ的な旅物語としても楽しめると思いました。旅の途中、死にゆく多くの赤ん坊たちをどうすることもできない自分の非力にベラが泣くシーンがありますが、大人であれば仕方ないことと切り捨ててしまうような物事に大泣きできるベラの「幼稚さ」を羨み/懐かしむと同時に、現在ガザで行われている惨状を思い出さずにはいられませんでした。
その実験台として父親の好きにされ、科学の犠牲/申し子になってしまったデフォー演じる医者が、物語の最後で実験できない「死」を知る、というサブストーリーも魅力的でした。