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裁かるゝジャンヌ(1928年製作の映画)
4.5
ジャンヌを演じるルネ・ファルコネッティの演技が圧巻。
この映画には、人間の全身を映すシーンはほとんどなく、顔の極端なクローズアップばかり。人間の肌の質感から唇の皺まで、すべてを見ることができて、その人物の全てを見た気になる。ジャンヌは頻繁に涙を流す。涙は目から垂直に顎へ向かって垂れ、彼女の頬を切り裂く。
本作の主要な登場人物で、女はジャンヌひとりだ。ジャンヌは多くの審問官からの尋問に耐えるが、審問官は審問官である前に男だ。ジャンヌというひとりの女は、作品を通じて、男からの尋問に耐え続ける。
物語の中盤、ジャンヌは気が昂り失神し、死の一歩手前まで行く。審問官は医師に瀉血を命じ、「どうにか生かせ。彼女を普通の死に方で死なせたくない」と言う。そこにもはや裁判はない。京アニ放火事件で、自らも全身に火傷を負った青葉被告へも、これと同じ言葉を投げかける人間がいたはずだ。
最終的にジャンヌは火刑に処される。1928年に公開された本作のジャンヌは、キリスト教世界2000年の業を背負うようにして、キリスト磔刑がカットバックされつつ、天に昇る。