新木

ナポレオンの新木のネタバレレビュー・内容・結末

ナポレオン(2023年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

御大の代表作『グラディエーター』は、鑑賞時にたしか中高生ながらも「これはものすごいものを観てるぜ」と思ったもので、そこから20年。テーマはナポレオンで、俳優はホアキンフェニックスに。確実にうまいこと仕上げてくるだろうと相当の期待を寄せていましたが、凡作にもならないものでがっかり(映像はきれい)。

ナポレオンをどのように描きたかったのかがまず不明瞭で。印象としては、一般的にフランス革命期においてヨーロッパ諸国との戦争を勝ちまくった(=フランスの領土を広げた?)英雄である彼とジョセフィーヌのある種意外なバランスから(ナポレオンよりすこしジョセフィーヌの背が高いとか良かった)、エジプト遠征途中にジョセフィーヌに愛人がいることが知れるとフランスに引き返し、追放されたエルバ島からもロシア皇帝との密会?を知って脱出し、死に際に残した最期の言葉が「ジョゼフィーヌ!」などと、最愛の人への独占欲にも似た描写からヒーローの弱さや孤独的なものを描きたかったようにも思えるも、それもなんだか中途半端でたぶん違うのでしょう。

その一方、彼の指揮官としての有能さも作品からは伝わらず(大砲撃つときに耳を塞ぐ仕草も威厳に欠けていたし)。省略は仕方ないにせよ、なんとなく偉いポジションになった感が強かったです。ちょうど昨日にあたる12月2日の戴冠式で自ら王冠を被せるなどの傲慢にも取れるのだが、wikiを参照すると「この行動には、欧州に自由の革命精神を根付かせるに当たって、帝冠は血筋によってではなく努力によって戴冠される時代が来たことを示すという事と、政治の支配下に教会を置くという事との二つの思惑が絡んでいると考えられる」とある。ナポレオンはコルシカ島からの成り上がりの象徴であったのかと言われると、そんな感もなく。むしろいちばん強調されていた気がするのはロシア遠征の失態(ラストに戦死者数を羅列するとかなにあれ不要)。

ハイライトは、亡くなるときのシーンでロシア遠征でモスクワを焼き払ったのは自分だと子どもたちに嘘をつくも、ロシア人たちが自分たちでやったというのは常識だよと返されたところかもしれません。セントヘレナは「高温多湿な気候と劣悪な環境」とwikiにはあったのですが、本作での様子は隠居にぴったりの楽園といった具合。なにが真実かよくわかりませんが、ナポレオンの労を労うような設定にますます困惑。四半世紀前に教科書で学んだ「サン=ベルナール峠を越えるボナパルト」の絵とともに馬にまたがって指揮をしている彼の勇敢な姿も、じつはつくられたものに感じつつ、山川の世界史また買って勉強し直そうかなと。
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