桃

突然炎のごとくの桃のネタバレレビュー・内容・結末

突然炎のごとく(1961年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

2022年49作品目。

トリュフォーの名作、ようやく鑑賞。

台詞がポエティックで好き。

オープニング
-愛していると男は言った
ちょっと待ってと女は言った
抱いて と女は言いかけた
うるさいと男は言った

オーストリア人のジュールと
フランス人のジムの
文学や詩を通じた友情。
原題はジュールとジム。

ジュールの家に女性を泊めた時のこと
-これは何?
-砂時計さ
-砂が落ちるまでに僕は眠る

やがてジュールはカトリーヌと出会い、
ジムとの3人での関係が始まる。

カトリーヌはジムをみて気に入り、
家に呼ぶ。
-嘘を燃やすの
そういって紙に火をつけるカトリーヌ
カトリーヌの服に炎が燃えうつり、
ジムが消す

(セリーヌ・シアマ監督の
『燃ゆる女の肖像』を思い出した。
オマージュだったのかな、思えば
絵画的なカメラワークも
通ずるところがあるような。)

ゆるやかに存在する
ジュールとジムとカトリーヌの三角関係。
断ち切るようにジュールが求婚。
カトリーヌは快諾し、
-あなたはうぶ
私は男をしってるわ

パートナーになるジュールとカトリーヌ
女性蔑視を続けるジュール
カトリーヌは非難し、
ジムは抗議するというが、
まごつきかかったときに
カトリーヌがセーヌ河に飛び込む

ジュールは青ざめ
カトリーヌはナポレオンのような微笑みをまとっていた

戦争の光景も描かれる
ドイツ人のジュールと、フランス人のジムがそれぞれ戦線に立つ

2人とも無事帰還することができ
ジュールとカトリーヌには子どもが出来ていた
娘とも会うためにドイツを訪れる

-彼女は僕を捨てそうだ
そう悩みを吐露するジュール
カトリーヌには愛人も3人
潔癖で無視をされると極端から極端へ走る

-ドイツ語では、
戦争、死、月 男性名詞
太陽、恋 女性名詞

ジムはカトリーヌがどう思っているのか
話を聞く

カトリーヌはジュールの
寛大さと傷つきやすさを好きになった

結婚前夜、ジュールの母に傷付けられたけれど
守ってくれなかった
仕返しに愛人と浮気した

また、ジュールとの子がもっと欲しかったが
子どもは1人で十分と言われ、
出て行き、浮気をしていた


カトリーヌの愛人である
下がり眉のアルベールが
ギターを片手にやってくる
4角関係
カトリーヌの歌声めちゃくちゃ良い

ジムは1ヶ月の滞在の後
仕事のため、パリに戻る

ジルベルトとのことに嫉妬したカトリーヌは
アルベールと浮気する
"ゼロから再出発"
それが彼女の信条だった

-この手紙は私の肌
インクは私の血

3ヶ月後
映画館でまた再会する
本を燃やすシーンも
最初の"嘘を燃やす"シーンと繋がる

カトリーヌはジムを連れて
湖に車を走らせる

ジュールとジム
ドンキホーテとサンチョパンサのような
友情
(理想に走る男と現実に走る男、とでも言おうか)

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トリュフォーはあくまで、
男同士の友情の物語
気立は良いが極端に走る女としての
カトリーヌを描いたのである

当時の女性観的にリアルなのかどうか
計り知れないけれども、
女性蔑視する男性や
女性を振り回す男性に対しての
フェアを求めるカトリーヌには
共感する部分がある

カトリーヌは
感情的にみられることを嫌い
理性的に抗議をしていたように思う
(行動が大胆だったけれども
鈍感な意識をかち割るには
ストレートなメッセージだけでは
伝わらない、という感覚もわからないでもない)

当時も、トリュフォーのもとには
「カトリーヌはわたしです」という
内容の手紙が世界中から届いたという

映画自体は素敵だけれど
ジムがパリのカフェで様々な人と
再会するシーン
一方的にしゃべる女性や
"この女は頭の中が空っぽなんだ"と
女性の頭をコツコツ叩く男性など
女性に喧嘩を売っているのか?
トリュフォー自体トラウマでもあるのか?
というシーンは気に障った。

しかし、
ヌーヴェルヴァーグの空気感、
絵画のような美しい映像
白黒映像によってむしろ、
時代を感じさせない描写、
フォントなどは惚れ惚れした。
桃