このレビューはネタバレを含みます
2022年39作品目。
一時期、大先輩に勧められた映画が美しい不倫もの(デヴィッドリーンの『逢引き』)でという話を母としていたら、"母的最も美しい不倫映画"として紹介された、この映画。
不倫不倫と言ってますが、親とそんな映画の話をする歳になりました。
そして、鑑賞してみましたが、めちゃくちゃ美しい。
ウォン・カーウァイ監督のタッチ、とても好きかもしれない。
プラトニックでドロドロはなく、エキゾチックさと音楽、アートワークでほろ酔いになる。
1962年の香港、こんなにチャイナドレスが日常衣装なの?
チャン夫人演じるマギー・チャンがまぁ、なんとも綺麗に着こなすので、チャイナドレスの虜になりました。
チャウ演じるトニー・レオンも魅力的。
隠れて会っているだけなんだけれど、2人が小径を舞台のように言葉を重ねる様子、共にご飯をつつく様子だけで、なんとも色っぽく、目が離せない。
とにかく演出が良い、のだろうと思う。
繰り返し流れる、梅林茂の無二のテーマ、ナット・キング・コールのジャズ。
鏡を使ったコンポジション。
エヴァンゲリオンかってテンションの、場面切り替え時のテキスタイル。
中国映画を観たことほとんどないんですが、漢字がどんって出てくるの新鮮。
ゴツゴツとした岩壁の階段を降りた先にある、地下の屋台。降り出した夕立さえ、雅を感じる。
チャン夫人のラーメンジャーと財布だけを持って歩く姿も、中身がラーメンなのに、なんて色っぽい。
「一線は超えない」と言いつつ、つい子どものように泣き出しちゃうチャン夫人、同じ女なのに、放っておけない魅力がある。
これは、世界観に浸るということでの、もう一度観たい映画。
花のように美しい時間。