このレビューはネタバレを含みます
映画監督だからといってプロデューサーやスポンサーの期待に応えられるとは限らない。
宗教、女、思想、良い発想はないかと自分の人生から手繰り寄せるがうまくいかない。
巨大なセットだけが先に組まれていく。
子どもの頃、魅了された女性は悪魔だと言われていた。
妻のことを大切にしたいのにどう伝えればいいかわからない。
愛人も大切で、失いたくない。
自分の肩書きを目当てに群がる女性も多いがそれすらも利用している。
ついには女性だらけ、しかも年齢制限ありのハーレムを作り上げる。
自分の作った映画なのか、記憶なのか、妄想なのかも曖昧になっていく。
監督なのに、作品の配役オーディションでも何も話せない。
取材されても何も出てこない。言えない。
急かされ続け、映画の制作時期は近づき、撮影を迎えても何も言えない。
結局莫大なセットを無駄にし映画を一本飛ばした。彼が肩に背負っていたものも無くなった。
そして右ポケットの銃。
そこからの詩的な台詞がスッとした。
もう一回観たい。
駄作を産むよりは、作らないほうがいい。
出来なかったこと、完成させなかったことで
また始められる。
作品の終わりと人生の終わりを重ねる。
終わることで、始まる。
なんの圧力もない、ただの自分の欲求に向き合うことで、大切な人に自分の気持ちを素直に伝えることができ、最後には自分が描いた物語を自分の好きなように作った。
「人生はお祭りだ。」
余計なものに纏われず、ただただこんなふうに思えること、自分のすべきことにまっすぐ向かい、楽しむこと。
それを知るのに近道はないのかもしれない。