桃

ブエノスアイレスの桃のネタバレレビュー・内容・結末

ブエノスアイレス(1997年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

2022年47作品目。

9月末に幕を閉じるテアトル梅田にて。

劇場に入ったら、似た思いを抱えてきている人ばかりで、壁一面に貼り出されているウォン・カーウァイの作品ポスターの撮影会状態。
テアトル梅田を惜しみつつ、偶然にもウォン・カーウァイを劇場で観れる機会に感謝をしつつ。


腐れ縁のファイとウィン。
アルゼンチンの旅の最後にイグアスの滝を目指すが、道に迷い、喧嘩別れをする。
"やり直そう"そう言われると弱ってしまう。
共依存の関係の2人。

ブエノスアイレスで資金を貯めるべく、ドアマンとして働くファイのもとに現れるウィン。
大怪我を負ったウィンは、ファイの家に転がり込み、また2人の関係が"やり直される"ことに。


ファイがつくる料理は美味しそう。
マンションの共同キッチンで、外国人が何語かわからないけど言い合いしている中で、淡々と中華料理を仕上げるファイの様が良い。

物語の中盤、ウィンの怪我が回復に向かい、そろそろ自分の元を離れてしまう、と不安に思いながら、ファイが美味しそうな2人分の料理を運ぶシーン、その後の1人で食べるシーンが切なかった。

ファイは、ウィンが転がり込んだ時に、こっそりウィンのパスポートを抜き取る。
そして、ウィンが出て行く時にはパスポートを返してくれと部屋中を探すが、返さないまま。
推しに人権をあげたいファンも居れば(ゆる言語学ラジオ#52「オタク用語の「しんどい」の精神は古典で既に登場してる、の会より)、恋人を手放したくないからパスポートを返さないケースもある。

お互いを失う怖さから、疑心暗鬼になる。トニーレオンの男泣きは絵になっていた。

レストランの厨房で出会ったチャンも良いキャラ。
小さい頃に目が悪かったので、道がとても良い。厨房の音を観察したり、ファイの電話の内容をさぐったり。
(耳の感性が強過ぎて、厨房に入ってきて逆ナンされるも、「声が好きじゃないから」とフる始末)
ファイと地元の店で酒を飲んでいた時の、別のテーブルの会話も聞こえたり。

ラストの、最南の岬でとったチャンの写真を、台湾の屋台でみつけたファイが嬉しそうに去っていくエンディングも好き。

そして毎度のことながら、音楽の使い方も大好き。
桃