公開当時、母と映画館で鑑賞した。
わたしは中学生で、横にいた母の涙に敏感に反応できるぐらいの半ばの集中力で観ていた記憶がある。
当時はそんな母のリアクションを「同じ立場からしか分からない感情があるんだろうな」と思っていた。
家族愛を謳ったストーリーであることは承知で、でも喪失感しかピンと来なかった当時よりかは、改めて鑑賞した今回もっと複雑なものを感じられて見甲斐があった。
母ちゃんの期待通りに育っていく姉弟。ただ親心とは、期待と裏腹に精神依存しながら “子ども” には ”子ども” のままでいてほしいもので、終盤の大雨シーンはとても胸を締め付けられた。
難儀な道をともに歩んできた愛ある故の不安と不信感が子どもの足を引っ張るのも、希望と正直な感情が矛盾するのも、人間として豊かで健康で普遍的だなと。
アニメーションという娯楽でこういう母の形を疑似体験できることに感心する。
従来のジェンダー枠に当てはめた『役割』のようなものを感じずにはいられなかったけど、今作は10年前の親子愛をテーマにした作品ということを加味して目をつぶった。
ロマンス編も母子編も地域の人々との関わり編も、テンポもコマ割りもゴチャゴチャしてなくて必要最低限という感じ。
親子に集中できるからわたしは好きだった。