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ゴジラの逆襲のmidoredのレビュー・感想・評価

ゴジラの逆襲(1955年製作の映画)
4.0
ゴジラ2作目には太平洋戦争の影も社会批判もありません。「原水爆の申し子ゴジラ」というフレーズすら浮いています。

あらすじ: ゴジラは東京湾で死んだ個体だけではなかった。山根博士が危惧した通りにゴジラ2号が目を覚ましアンギラスまで蘇った。訳もわからず20世紀に叩き起こされた恐竜2匹は大阪をぐしゃぐしゃにしながら存分にレスリングをするのでありました。

なぜ陸に住んでいたであろう恐竜たちが海から出てくるのか?果たしてオキシジェンデストロイヤーなくしてゴジラは撃退できるのか?などどいう細かい話はもはやどうでもよく、ゴジラ2号とアンギラスの格闘シーンが最高に面白い、それそこがこの映画の大事な部分だと思います。『ゴジラ』では足音がするたびにピカドンを思い出し、人々が死ぬたびに陰鬱になったものですが、今作は2匹の暴れる様子を安全に楽しむ映画でした。

とにかく戦うシーンが面白い。普通、生物の巨大さを表すためにスローモーションを使いそうなものですが、この『ゴジラの逆襲』はなんと速度を上げてきます。造形も癖も技も異る2匹が、プルプル震えながらチャカチャカ戦うたびに、大阪の街を模したジオラマが派手に火を吹いたり派手に壊れるシュールさと言ったらありません。意味が分からない面白さでした。

しかも、映画の中でどんなに壊れても現実の大阪は絶対に壊れないし、例え壊れたとしても、今あるように立派に復興を成し遂げるだろうという強く明るい確信のもとで、遠慮なく、と言うよりはむしろ過剰にぶっ壊しているようでもありました。もちろん死者もいませんから悲壮感も全くありません。

こうなるとケに対するハレ、要はただのお祭りなんですね。怪獣映画が楽しいのは怪獣が「見たことのない生き物」として魅力的であることと、日常を期間限定で壊す一種のお祭りだからだと思いました。

水爆実験の事故で顕現したゴジラという恐ろしい神様を、怪獣映画という形で召喚して、偽物の街をささげて破壊させることでケガレを祓い、日々の平穏と息災を願うお祭り、それがゴジラシリーズなのではないでしょうか。

だから『シン・ゴジラ』のように変にシリアスにしたり意味を持たせずに、ゴジラvsアンギラスのような形で続ける方がご利益があると思います。それゆえゴジラシリーズはみんなそんな具合だったのでは。

思えば大昔から恐ろしい伝説の生き物は神様でもありましたし、ジオラマの大阪が派手に燃える様は、紙の人形にケガレをうつして払う人形祓に通じます。原爆や空襲による民間人の大量虐殺という戦争時のトラウマを無意識のうちに日本的な方法で乗り越えようとしているという意味で非常に興味深い2作目でした。
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