mimocyan

海がきこえるのmimocyanのレビュー・感想・評価

海がきこえる(1993年製作の映画)
3.6
ドラマティックでもロマンティックでもない
けれど高校生の頃の限界とか、尺度とか、皮膚感覚で覚えてる手を伸ばせそうな距離感とか
そういうのが詰め込まれてて、見た目以上に古さを感じない
むしろ、あぁこの形になりきらないまま手を伸ばそうとすることこそがあの頃の自分たちだったと改めて気づかされるくらい

主人公は地方バリバリの田舎の学生なのですが、そこがまた良いエッセンスに
自分も地方出身者なので全編を通して話される濃い土佐弁での日常のやりとりは、そのまま自分の生まれた地方の言葉にも自然にリンクしていき、尚更ノスタルジーをかき立てさせる
なにより、学生の頃に意識する東京との対比が色濃く映画に現れてて、ヒロインへのやや屈折した想いともダイレクトに重なる
里伽子は確かにめんどくさくて、はぁ?っていう女子ですが、こういう娘が好きになるのはよくわかる
なんなんだあいつ…って思いながらもいつのまにか心を支配されちゃってるのです

そんなめんどくさい娘と、ほんとはただ並んで歩いたり、高知城を一緒に眺めたかったって回想するところが好き
そんなささやかな願いすら、遠回しになってしまっていた不器用さに静かに共感してしまうのでした

かつて高校生だった、名もなき少年少女たちを代弁するラブストーリーって感じで非常に好印象
もしできるなら、またあの放課後の教室に戻ってみたいな
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