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ニューヨーク 眺めのいい部屋売りますのmimocyanのレビュー・感想・評価

3.5
眺めのいい部屋っていいですよね
快適さはお金があれば大抵叶えられるけど、その部屋から見える景色は巡り合わせでもあり、その街の変化とともに時を共にしてこそ得られるものでもある
家そのものよりも自分だけのとびきりに成りうるものだと思います
しかしその代わり地上5階、エレベーターなしと来たらそれはそれで困ったものです

こういう2人だけで歳を重ねた夫婦の姿をみると、昔から自分によくして頂いてる親戚夫婦のことを思い出します
親戚夫婦も旦那さんが芸術&芸能関係の仕事をしていて、奥さんがそのサポート役
家があったのは日本で住んでみたい街としてよく名前があがるところで、丘からの眺めがよくて自分も大好きでした
何年か前にそのご夫婦も今後家をどうするかっていうことで、長い間住んできた場所を離れる決意をして引っ越したのですが、その時自分も近い位置からその過程をみていたので、当時のことと映画とが重なりました

子供がいる家庭ももちろん素晴らしいですが、2人きりで長い間を過ごしてきた夫婦には独特の芯の強さがあります
背中をあずけられる関係というか、佇まいから漂ってくるものがあるというか
これまでの人生で背負ってきた選択や葛藤を超えて軽やかに生きる姿は一種の憧れすら感じてしまう
モーガン・フリーマン、ダイアン・キートンの2人はそんな夫婦像を最高の形で表現していたと思います
背景として、かつて黒人と白人の結婚が喜ばれなかった時代に抗って、人生を共にする決意をした過去があるわけですが、その上で現在の2人の連れそう姿がまぁ画になること
さりげなくインサートされる過去の回想もいやらしくなく、ただただじんわりと心に残る

途中で出てくるメガネの少女は本当にあのベッドで寝る女性の子供なんでしょうか
もしかしたら…という想像もしてしまったんだけど、どうなんだろう

タイトル通り、部屋を売る話でしかないのですが、ささやかな決断の中に詰まった夫婦の歩みをこれほど豊かに映画にされると、余計なストーリーなんていらないですね
ちょっとだけ余計なケチを付けるとすれば、必要なファクターではあったものの、やや混じりきらずに収束してしまう同時進行のエピソードに若干の肩透かしも
けれど、それがこの映画の評価を左右する問題になるかといえば、全然ノーなのです

最後の決断にしても、すごくよくわからるけど、それでいいんだろうか…と心配にもなるんですが、自分だったらどうするだろうと
そんなの決まってます
最後までありのままで幸せでいたい
誰かと共に自分の人生を肯定できるってほんとに素晴らしいことだと思います
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