mimocyan

ルームのmimocyanのレビュー・感想・評価

ルーム(2015年製作の映画)
3.8
2つの側面がある映画だと思います
ひとつは、5歳から「世界」をはじめた子供目線の話
もうひとつは、監禁事件の被害者のその後を描いた話


かつて日本でおこったある監禁事件被害者のお父様が残した言葉で、今も記憶に残っているものがあります
「どんなに時間を費やしても時間が埋まらない、埋まらないんです」

世界の領域、ということを考えた
ジャックとジョイの言う世界は、映画の終盤までは同一のものではありません
ジャックにとっては母親と生活するあの狭い部屋が領域の全て
しかし、ジョイにとっては部屋の外こそが世界であり、本来いるべき領域
ジャックが子供だから、無知だからと片付けることもできますが、もしジャックが大人になるまであの部屋に閉じ込められていたとしても、自分の置かれている状況が異常であるとは思わないでしょう

裏を返せば子供にとっての親の存在がいかに大きく、安息を与えてくれるものであるかを表してるとも言えますが、その上でジョイとその両親との中盤を見ると人との結び付きとはつまり、領域の共有なんだと思うに至りました

クライマックスで2人の描く世界はようやく同一のものになります
ジャックにとってはあの忌まわしい部屋でさえ、自分自身の、そしてこれから開かれていく世界の一部なんです
だからこそ、さらに広い世界へ母と手を携えて歩きだそうとするジャックのラスト間際の台詞には、とても考えさせられるものがありました


閉鎖的な部屋、破壊された家族とその人生、メディアからの露骨なセカンドレイプ…非常にシビアな内容を扱ってはいるものの、ジャックが外の世界を体感する鮮烈な描写が大きな息吹となって、映画を窮屈なものにしてません
脱出シーンは切迫した状況でありながらも、それを忘れて観ているこっちまで急激に広がってく世界のスケールにドキドキしてしまいました
天窓ごしではなく、初めて大空の広がりを見たときのあの表情!
それもこれもジェイコブくんの演技が素晴らしいことにつきます
こんないい子いったいどこから見つけてきたんでしょう
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