これほどストレスを感じながら見た作品は久しぶりだ。随所に仕込まれた厭らしい設定。泣きを誘発させようとするあざとさと、問題意識に欠けた雑な愛情バンザイ…大丈夫?
役者の演技が良いだけに、もったいない。そして誰も止めずにこういう映画が出てくる邦画界はいろんな意味で(これに関しては褒められないけど)まだ可能性があるな、と。
公開して間もないのに「ハンカチじゃ足りないほど泣く」「今年の代表作」「今年1本だけ見るなら絶対にこれ」等々の絶賛が聞こえてくる作品だったから、やや警戒しつつ見た。
が、泣けないどころか勇気の出しどころを始め、あらゆる言動に首を傾げる始末。これをヨシとしてストーリーを展開させ演出したことが気持ち悪いなぁ…と思う場面の連続だった。
病人はおとなしく寝てて、とは思わないけど具合が悪くなるかも、という自覚があるのに運転するのは本人も周りも危険だから自制してね。よくまぁ行かせたもんだ。
女性に対する視線が一見すると愛情や情熱などポジティブな空気に覆われている分、とても歪んでいる。見るも無惨なエグみがダダ漏れだけど。
水着と下着の違いも分からない(分かっててさせたのたら本当に酷い)作品に出演してしまった少女が可哀想だ。なんてことない、仕事だし気にしてないと役者が考えているならその点は流せるけれど、観客の、少なくとも私の気持ちは抉られた。粗相について軽く扱った事に対しても(加えて、始末の方法が最悪)溜め息モノ。
何かを受賞したらしいが、強引で無神経な言動を作家性の暴発と呼ぶならともかく、感動作とまとめるならば鈍感すぎて心配だ。
ラストは想像がついたので拍子抜けしたし、そこでドヤァアア!と出てくるタイトルには辟易。
演技以外で良かったのは唯一、手話シークエンスか。唐突な前フリはどうかと思ったけど、まぁうまく回収したなと。
評価が高いのは納得する人が多い、私の感覚がズレてるって事か、と思っていたら意外にも賛否両論らしく。
否定派もそれぞれに「ここが嫌」は違うのだろうけど。
好きだろうが嫌いだろうが作品が注目されるのは悪い事ではないし、自分の「嫌ポイント」がどこにあるか改めて考えるきっかけになったと思えば、たまにはいいか。