ホッツるマッツる太郎

MERU/メルーのホッツるマッツる太郎のレビュー・感想・評価

MERU/メルー(2014年製作の映画)
4.0
登山映画はどれもシビアな現実と想像を絶する心身のタフさ(あるいは限界)を感じるけど、この作品もまぁ凄まじい。関東の平地で寒いとか荷物が重いとか言ってらんない。

世界最難関の峻峰、その断崖の険しさから鮫のヒレことシャークスフィンと呼ばれるヒマラヤ中央峰を目指すドキュメンタリー。過酷さの中にヒトの可能性を感じられる雄大な世界で、今年の映画初めにふさわしい作品だった。

語られるエピソードや登山シーン、音楽のバランスから漂う監督の誠実さ。今後はドローン撮影も発展するだろうけど、IMAXカメラを持ち込む余裕など1gもない現場での貴重な映像と、プロフェッショナルなメンバー3人の信頼関係が素ッ晴らしい!喪失と挫折からの堅実な挑戦。

フィクションでは往々にして物語の緩急をつけるために「やらんでいいことやる輩」や「私利私欲を優先する奴」が登場してイライラさせられるけれど(ノンフィクションでも存在するね)この作品にそれはなく、だけど衝撃的な事実がサラサラぽんぽんと飛び出してきて驚く。
その状況、状態から、その選択をするのか?許すのか?という。

それが長年の関係性とキャリアで築かれた絆なのだろう。ひとつのミスが命取りになる一蓮托生の世界で、大怪我を負い重病発症の可能性がある人を仲間に加えるという事は、そうそう出来ることではない。

91分とコンパクトながら手汗かくほど山の厳しさと壮麗さを堪能。メンバーが素敵だったので(特にジミー・チン…監督とプロデュースと撮影兼任するってまぁ最高)パンフレット購入。強気の1,000円に迷ったけど、クライマー達の寄稿やコメントは興味深くて良かった。