Arsenyevich

ポンヌフの恋人のArsenyevichのネタバレレビュー・内容・結末

ポンヌフの恋人(1991年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

研ぎ澄まされて鋭利になり過ぎたナイフのような映画。

ハッピーエンドにも関わらず、
全編通して死と狂気の匂いが香り立つ。
この刺々しい魅力。
出だしの走行シーンからして、
心地よい浮遊感とざわめく不安感がまとわりつく。象徴的な橋の存在は、何なのか。居心地は決して良くないはずなのに、また戻りたい。

圧倒的な解放感と狂騒に満ち溢れた花火シーンは、数ある映画史の中でも指折りに好きだ。PUBLIC ENEMYからのシュトラウス。
20世紀から21世紀の綱渡しが、この僅か5分に凝縮されている。

狂気と純愛は、表裏一体で、
アレックスの度を越したミシェルに対する気持ちよりも、ミシェルの気持ちの変容のほうが、悍ましく恐ろしい。
同じ場所にいようと、どれだけ時間を共有しようと、他人の心を囲いに縛りつけるなんて無理。
それでいて、忘れたいこと、忘れられないことは、人の心を縛りつける。

直せないものはない…
そう信じたい気持ちは痛い程わかるな。
Arsenyevich

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