Arsenyevich

アネットのArsenyevichのネタバレレビュー・内容・結末

アネット(2021年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

レオス・カラックスの映画を一言で言うと、
「狂気」
それも、とびきり鋭い
切実さに満ち溢れた狂気。

スタンダップコメディアンのヘンリーは、観衆の前で笑いを取る為に、全身全霊を注ぐ。どれだけ全力を注いでも笑いのとれない舞台。その苦しさはどれ程のものか。
ブーイングを浴びるベガスのショーは、
見るに耐えらず思わず涙が込み上げた。
滑稽なのは観衆か、ヘンリーなのか。
「過激」なパフォーマンスを常に欲してるのは観衆のはず。ハーフタイムのアネットも含めて。

そして演出の妙が冴え渡るアネットの不在。
この一見小賢しい人形劇が、
操り糸のように家族3人の運命を手繰り寄せ、不穏な空気感を増幅させる。操られているのはもはや生身の大人達ではないか。

自虐と自己愛のせめぎ合い。
シニカルで気取っていながらも、カラックスの見つめる深層心理の描き方は、ナイフで抉られるように、痛い。

アダム・ドライバーの怪演は強烈にインパクトに残ったな。勿論アネットも。
Arsenyevich

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