大道幸之丞

犯罪都市の大道幸之丞のネタバレレビュー・内容・結末

犯罪都市(2017年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

「守護天使」でマ・ドンソクが気になり鑑賞。これは面白い。
ギャング/ヤクザ映画は銃を出してしまうと実はあまり迫力もないしエンターテイメント性からいうと個性も出ない。北野監督作品はまさにそれを悪い意味で証明してしまっている。

まず主人公が衿川警察署強力班のマ・ソクト(マ・ドンソク)で、彼は腕力に自信があり、やり手の刑事であるが、冒頭の描写で杓子定規な正義漢ではなく、自分には厳しいが周囲へは「うまくやれ」と言った調子の柔軟性のある刑事だ。そして部下には「アニキ」のように厳しく優しい。食事や酒を奢る甲斐性もある。

今回は韓国のチャイナタウンである衿川区に元々は朝鮮族マフィア「毒蛇(ドクサ)組」と「イス組」の対立がありそのいざこざに苦心していたところへ中国のハルピンから「黒竜(フンリョン)組」のチャン・チェン(ユン・ゲサン)らが流れ込んでくる。

韓国はテコンドーの国であるし中国はカンフーの国であるがチャン・チェンらは懐に鉈(ナタ)を忍ばせており、相手の腕や足を切断するし何かとためらいもなく鉈を振り回し、韓国側のマフィアに比べても凶暴さが上だ。我々日本人からすると想定より確実に残虐だ。

朝鮮族マフィアを手玉に取り縄張りを自分たちのものにし手を汚さずに金を儲ける算段だったが、その抗争でまず朝鮮マフィア勢が大勢殺し合う。

チャン・チェンは縄張りを更地にして幹部のウィ・ソンラク(チン・ソンギュ)に金を出させレジャービルに建て替えさせるつもりで動く、

強力班のマ・ソクト(マ・ドンソク)はこれらを検挙すべく戦いを挑む。

——本作がよく出来ているのは、強力班の仕事が辛く異動した部下がいて、しかし彼が問題の重大局面でキーになったり、抗争の中にも細かな人間描写を入れるので全く飽きさせないし、ソクトと出入りの食堂の少年との麗しい関係もある。

しかし少年は抗争の中でチャン・チェンに鉈で店主とともに負傷する。ソクトが怒り心頭になる出来事が積み重なり、我々は完全に「ソクト!やっちまえ!」になっている。

戦いのシーンも手抜き無しで格闘の迫力と残虐さが加味され見ごたえのあるものになっている。悪党チャン・チェン役のユン・ゲサンは K-POPのアイドルグループgodのメンバーだが、往年の金城武似のクールな男前で、極悪非道の役柄を完璧に演じきっている。

日本は日本で最近北野監督の影響なのかぼつぼつヤクザ映画が撮られるようになってきているが、比べる必要はないとも思うが、面白さはこちらのほうが完全に上だ。

ベタと感じるような本作のようなバイオレンス・アクションものも韓国、というよりマ・ドンソク出演作品にはハズレがなさそうだ。