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ぼくらの7日間戦争のArAー1のレビュー・感想・評価

ぼくらの7日間戦争(2019年製作の映画)
2.2
【一言】
『ぼくらの七日間戦争』を現代へ。
“ユーモア”と“大人への反抗”が不在。
「ぼくら」の根幹が破壊された物語。
現代の価値観や社会情勢を頑張って取り入れてたが、元気な子供の姿はなく、寂しい。
この作品が子供の心を解放するか?
否。大人を擁護し子供を萎縮させる。



【感想】
 宗田理さんの原作シリーズが本当に大好きで、それに角川の実写版2作品もとても大好きで、この劇場アニメも楽しみにしていました! しかも、本作は1988年の実写版から30年後を描く続編的な立ち位置の作品です!
 まぁ、結果から言えば「残念」の一言でした......。
 あのワクワク期待していた高揚感を返せ!と叫びたい....。

 ということで、『ぼくらの7日間戦争』です。
 私は、原作も実写版もこの『ぼくらシリーズ』が本当に大好きなんです。読んでいてい観ていてワクワクするし、楽しいし、スカッとするし。 それでいて、よく考えられていて、色々な知識やニュースが織り込まれていて、とても良くできた物語だと思います。
 だから、本作『7日間戦争』は楽しみに期待していて、なのでとても残念としか言いようがないです......。

 色々と書きたいことはありますが、頑張って整理します(笑)
 とか言いつつ、無理なので、取り敢えず箇条書きに。

 『ぼくら』の形式を破ったのが一番よくない。
・ラブストーリーにしたこと
・ユーモアさが一欠片もなかったこと
・イタズラで大人を倒すのではないこと
・そもそも目的が「大人への反抗」でないこと
・たった7人という少人数なこと
・戦争の「せ」の字もなかった
・子どもの味方が誰もいなかったこと
・子どもの無邪気さが皆無だったこと
・ってか高校生は子どもなのだろうか

等々。 多分、この作品の名前が『ぼくら』を冠していなければ、まだ心穏やかだったのかもしれません。『ぼくら』を踏襲した形で作ってしまったから、比較しちゃうし、求めるものも変わってしまいます。

 中でも、「ラブストーリーにしたこと」と「大人への反抗でない」という点については、激しく批判したいです。
 原作や実写版では「不純異性行為」になるからと女子を連れ込みませんでした。そういう配慮があったのです。でも本作では完全にラブストーリーが主役になってしまっているんですから。
 それに、『ぼくら』の一番の目的は「大人への反抗」で、その手段としての「解放区やイタズラ」だったわけです。しかし本作では主人公らの動機がズレているから、違和感を感じざるを得ません。

 ただし、価値観が変わったのかも。
 1980年代とは社会も子どもを取り巻く環境も価値観も変化しているから、30年も40年も前の尺度で考えるのは注意が必要ですね。
 実際、本作ではインターネットやSNSという新しいメディアを上手く活用しているし、物語中に移民問題や性的マイノリティーのことを描いていたりと、アップデートされている部分もあります。
 これが、現代の子どもたちなのかもしれません。
 そして、この映画だからこそ”今の子ども”に《勇気》を示せていた部分も少なからずありました。(議論の余地あり)

 とはいえ、アニメ化は難しかったかな?
 『ぼくら』の魅力の1つは、騒々しさだと思います。
 クラス全員や男子の多くが全員で一丸となってワイワイガヤガヤと喋り、次から次へとトラップを作動させていく情報量の多さ。 解放区や秘密基地は、鎖や鉄くずやパイプが埃まみれになっている、雑多な感じが小説からイメージできるし、実写版でも見事でした。
 でも、本作は違います。
 登場するのはたった7人だけで、発言は丁寧に1人ずつ被りません。舞台の廃工場も綺麗で整っています。トラップだって、規模が小さく迫力がありません。
 やっぱり、アニメーションで描くには作業量が膨大になるから面倒くさいんですかね?

 『ぼくら』にはルールがあると私は感じます。
 大人にも子どもにも《超えてはならない一線》があって、物語の中でいかに描かれるか、どう動くのかを決めているような。例えば、作中では「大人と子どもは対等の立場になる」とか。 でも、私が考えるルールについては、本作では容赦なく壊していたなぁと、悲しくなりました。

 この作品が「管理社会の子どもを解放するか?」と聞かれれば、私は絶対にノーと答えると思います。
 子どもの扱いにしても、物語にしても酷いものです。それにあのラストは絶対に認めてはいけない展開ではなかったのですか?
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