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パラサイト 半地下の家族のtomoのネタバレレビュー・内容・結末

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

前半は比較的笑って見られるんだけど、後半の転げ落ちるような展開がなんともまあ。格差社会を描いているが、硬くせずこういうブラックユーモアで社会問題を風刺するのが韓国映画の真骨頂ですね。
半地下に住む主人公一家、やっていることは言い訳のしようのない詐欺行為で、代わりに解雇された人など実害も出ているんだけど、なんとも人間らしい憎めない感じの人物描写。雇われるまでの経緯は間違いなく詐欺だが、雇われた後の仕事ぶりはしっかりしている。チャンスさえ与えられれば十分な稼ぎを得られる実力も人間的魅力もある人たちなのに、詐欺でもしないとそのチャンスが得られないのが格差社会の格差社会たる所以である。
一方の裕福な一家、こちらは責められるべきところは全くなく、金持ち特有の傲慢さなども基本的にないのだが、無意識の差別意識の描写のせいでなんとなく鼻につく感じに描かれている。その差別意識もあからさまに表面に出すことはしないし、惨劇のきっかけになった臭いの話も本人に向かって言うような失礼なことはしていない。主人公一家には一貫して真っ当に接している。
そんな2家族が、半地下よりも更に下層に住む人物(そこに至る経緯にどうも過去の主人公一家の仕事上の失敗が絡んでいたらしいのは偶然とは言えちょっと出来過ぎ)とのエンカウントを契機に惨劇に雪崩れ込んでしまう。半地下の家族も地下の男も裕福な一家に寄生しており、それぞれ自己の悪事をバラされまいと焦って衝突してしまう。地下の男が家族を失った怒りで地上に出て眩しい太陽の下で敵に刃を向けるのも、半地下の両親が家族を守ろうと反撃するのも、居合わせた裕福な一家が自分の子供を守ろうと必死になるのも、全部ある意味当たり前のことなのに、悪意ない一瞬の仕草で感情が弾けて、敵ではなかったはずの人まで攻撃してしまう衝撃。エピローグ部分では父がそれを後悔している様子もある。富豪一家の娘が、あの惨劇の中で、恋仲になった半地下の主人公を助けようと背負って逃げていたのも地味に心に残る。全部が哀しい。
出会い方が違ったら、不幸な偶然が重ならなければ、みんな上手くいく未来もあったのではと思ってしまうが、全てが自業自得とも言える。結局主人公たちは半地下や地下から抜け出せておらず、主人公の最後の決意も、あまりにも実現性の薄い空虚な空想としか響かないのである。
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