桃

獅子座の桃のネタバレレビュー・内容・結末

獅子座(1959年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

2022年48作品目。

ヌーヴェルヴァーグ特集にて。

親族の遺産頼みに人生の頂点からどん底まで振り回される、ふわふわヴァイオリニストがパリをひたすらふらつき歩く話。

億万長者になる、住んでいる部屋が建物の取り壊しで家を出ることになる、そんな出来事がピエールに一気に起こる。

気前良くなって(計画性がなく)、金持ちの友人に前借りをして、仲間で豪遊三昧する。
ところが、遺産相続の話は、蓋を開けたら一銭ももらえない展開に。

部屋も出ているピエールは友人や親族に助けを請うにも、タイミング悪く皆、バカンスでパリにはいない。

何日も何日も訪ね歩き、ホテルの宿泊費も踏み倒し、食べ物も所持金も底を尽きる。
背広はシミだらけ、靴底も抜ける。
髭も生えっぱなし。

万引きしては大衆の面前でどやされ、川に浮かぶ塵まで拾って食べる始末。

キラキラのパリから、ダークなパリまで
落差が大きい。

貧困は人の知性を鈍らせ、IQを13ポイント下げる可能性があると、ハーバード大から発表された2013年の研究報告にはある。

他の友人たちと違い、ヴァイオリニストとしてある程度パリで知られていたくらいなので、元々が裕福で、「とりあえず一旦働いてなんとかしよう」とならないのもあるのかもしれない。
ホームレスになっても、台車に乗せてもらい、漫才も相方任せ、全ては他人任せ。
しかし、唯一ヴァイオリンを目の前にすると、血が騒ぐ。

獅子座の自らの運勢のみを頼りにするピエールのどうしようもなさを皮肉に描きつつも、パリのサンジェルマン街並みが豊潤に映されており、贅沢。
ヴァイオリニストとして、しっかり頑張ってほしいピエール。
桃