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⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎のhokaのレビュー・感想・評価

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)
3.3
私は前評判が高い映画には、常に眉に唾してかかる捻くれものであるが、それでもこの映画はその報われ無さや虚無感を含め満足させられた。

戦後昭和の価値観や、戦後復興の名の下に犠牲になった人々と、財閥解体された筈なのに、それを食い物に肥え太った実在する資産家達。

近親交配で富の占有を図り、やがて血族が絶える事例は中世からよく見られたが、時貞の場合はそういった理由ではなく、単純に変態好事家のそれである事が沙代のあわれを誘う。

時代が変わっても為政者や財界人達は大した罪悪感も無く、下々に犠牲を強いている。

龍賀製薬の財は幽霊族や村外から連れてこられた人々の強制的な自己犠牲の上に立っているという世の在り方は、言い換えれば、アウトソーシングなどで人件費を搾取して肥え太る多国籍企業に酷似している。

理不尽なのは、狂骨は龍賀一族にこそ恨みがある筈なのに、霊体になっても尚、そのくびきから逃れられなかった事。

鬼太郎の母も謎が多い。

人間に駆逐された幽霊族の生き残りなのに、どのような理由で、明らかに危険な人間社会で生きる事に生きがいを見出したのだろう?

酷い目に遭わされても、他種族という括りで人を判断してはならないという教えだろうか?

それ自体、映画一本分に相当するゲゲゲの母の謎だ。
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