人は孤独ゆえにアンドロイドを作る。
幼いころ父に捨てられ、母も失い孤独に生きてきた男。
父は病院の看護師と関係を持ち、自分と母を捨て、母は暖炉で焼身自殺を遂げる。皮肉にもその暖炉の薪をくべるのは薫の役目だった。
幼い頃から自分を見てくれなかった父。父に愛されなかった自分は本当にそこに存在するのか。いまや病で今わの際にある父を延命させてまで薫にはやり遂げることがあった。
それは自分そっくりのアンドロイドを作り父に見せることだった。
父に愛されなかった自分はこの世に存在しないのかもしれない。しかし、このアンドロイドは間違いなく存在する。父にこれを見せて否が応でも自分の存在を知らしめようとしたのだろうか。
親に愛されなかった孤独な男、その男が作り上げたアンドロイドだけが佇む屋敷にもう一人のアンドロイドが現れる。ともにこの世界で孤独だった二人が出会う瞬間で本作は幕を閉じる。
人は誰しも孤独であり、そんな孤独を埋めるために今もどこかでアンドロイドは作られているのかもしれない。