ちい

ラーゲリより愛を込めてのちいのネタバレレビュー・内容・結末

ラーゲリより愛を込めて(2022年製作の映画)
3.1

このレビューはネタバレを含みます

「生きる」って、ただ生きるだけじゃなくて、名前を呼んでくれる人がいて、日々のささやかな楽しみがあって、会いたいと思える人がいることなんだなと改めて気づかせてくれた。

戦争で人を殺すことが続き、人間でいることをやめてしまった相沢軍曹(桐谷健太)にも大切な奥さんと生まれてくるはずだった子供がいて、戦友を失った恐怖から戦地で逃亡し「卑怯者」と呼ばれたことに苦しんだ松田一等兵(松坂桃李)にも会いたかったお母さんがいて、ただ漁をしていただけなのに連れてこられてしまったしんちゃん(中島健人)にもだいすきなお父さんや抑留先でパンを分け合ったクロ(犬)がいて、日本に帰るためになら友人を売ることも厭わないという原さんにも大切な家族がいる。

それぞれの大切な人のもとに帰れたり、帰れなかったりしたけれど、山本さんが「生きる」ことを教えた人たちがそれぞれの大切な人のことを思い浮かべながら、遺書を「記憶」して山本さんの遺族の元に届けるシーンは涙なしではみられなかった。

山本さんが教えてくれた字で子供達に思いを届けたしんちゃんが満足気に空を見上げていたのが印象的。初めて出した手紙では「タ」が逆向きになってたけど、きっとスラスラと文字を描けるようになったんだろうな。

「希望」を捨てずに、日本で落ち合うという約束を守ってくれると信じ続けるモジミ(北川景子)の明るさと愛に救われました。

2022年の結婚式(山本さんの長男の孫娘が新婦)で、「今日という日を忘れないで」といった言葉が、冒頭の家族みんなで参列した結婚式とリンクするという終わり方から、家族と記憶がこれからも続いていくのを予感させた。
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