無口なゆえに冷え切った家庭を作った父親にも非があるように見えるが、最終的に母親ひとりに幼い息子の自殺未遂の原因があり、そんな母親は嫌な奴という共通認識により父と息子が連帯する着地は男性目線での物語だと>>続きを読む
ギャンブラーでありながらも、勝ち負けの快楽に身を浸すことも、身を堕とすこともなく、かといってプロフェッショナリズムを感じるわけでもなく、ただ無気力で同じルーティーンを繰り返すジェイソン・アイザックス演>>続きを読む
何重もの入れ子構造になっている複雑難儀な一作だが、いつものウェス・アンダーソン作品よりも俳優の演技の自由度は高い印象を受ける。正面や真横からの絵画的なキメ画は相変わらず炸裂するものの、駒のように俳優を>>続きを読む
電波系無差別殺人や掟破りの構成、強引すぎる展開などありつつも、ワイルドなパワーと面白さ、やんちゃな美形兄弟の色気とカッコよさ、そして何と言ってもウィレム・デフォー演じるエフビーアイ特別捜査官の変態的な>>続きを読む
スカーレット・ヨハンソンが「真珠の耳飾りの少女」としてキャンバスに固定化されたとき。あるいは妻に言い寄られたフェルメールが描いていた「真珠の耳飾りの少女」を見せようとして、そこにスカーレット・ヨハンソ>>続きを読む
90分という尺のうえに章立ての構成になっており、物語も人間ドラマや台詞を極力まで削ぎ落とし、シチュエーションにバリエーションをつけながら不死身の男とナチスとの攻防に焦点を絞ることで非常に見やすい娯楽作>>続きを読む
アルジェのカスバの街並みが素晴らしい。高低差のある狭く複雑に入り組んだ無数の路地に、所狭しと建ち並ぶ建物の数々。そこで生きる人間たちが息づく営みと、その営みに紛れて息をひそめるお尋ね者。部下や仲間に囲>>続きを読む
人よりも先に行動してしまう男性と、人よりも遅れて行動してしまう女性が、ある数日の出来事をそれぞれの視点から物語ることで観客は互いの接点や想いを知り、そして時を経て印象的な名前を呼ぶ=互いの正体を認識す>>続きを読む
黒人のルーツである南部とは意識的に距離を置き、シカゴで家族と仕事だけの世界の幸せを死守してきた黒人女性に降りかかる悲劇を契機に、黒人であることを突きつけられアイデンティティが覚醒するまでを、人間として>>続きを読む
冒頭よりベルトコンベア式の工場で出来上がる商品と労働者を流麗なカメラワークで映し出す。画一的かつ革新的な超モダンな工場のデザインと、ルネ・クレール作品の最大の魅力であるカメラと人物の配置や動線の見事さ>>続きを読む
宝くじを入れた上着と男を追いかけて、笑いとサスペンスに満ちた追跡が始まり、周囲の人間を巻き込んで拡大していく。もう後に引けない状況の人間たちが文字通り動き回るさまを、カオスになる手前できっちり動線を決>>続きを読む
主題歌がパスカルズということもあり、晩年の大林宣彦作品『この空の花』『野のなななのか』のような趣を感じる。劇中で登場する妻の遺骨を毎年花火に混ぜて打ち上げたと言う笹野高史(両作品ともタクシー運転手とし>>続きを読む
上りのエスカレーターに乗る足元を映す画ではじまるところで、原恵一ファンとしては『クレしん オトナ帝国の逆襲』と全くの同一ショットだと心躍らせてしまうが、子供向け劇場中編のなかに、原恵一ならではの悪役や>>続きを読む
気高く我慢強く美しい、あるいは暴力的で粗野であるというイメージが意識的/無意識的にまとわりついてしまうフィクションにおける黒人のイメージが独り歩きして雪だるま式に暴走していく茶番劇の滑稽さが面白い。堅>>続きを読む
アニエス・ヴァルダは映画製作において重要なのは「ひらめき」と「創造」と「共有」だと言う。何かを撮りたいという衝動や欲求があり、そのためにはどのようなスタイルで物語るのが最善かを選択し、その映画を独りよ>>続きを読む
パリのダゲール街で商いをしている人々のステレオタイプな日常と彼らの肖像を描いたドキュメンタリーであるが、まずは劇映画同様にアニエス・ヴァルダという映画作家の構成・編集の巧さに感服する。
決して華やか>>続きを読む
まるでジャン・ルノワールの名作「ピクニック」を連想させるような森の中での家族の幸せな光景から始まる本作は、鮮やかな色彩溢れる画面や優雅に流れるクラシック音楽によって醸成される多幸感に満ち満ちているよう>>続きを読む
自分のよき理解者であった父親は早くに死に、親友はひょんなことで筋肉バカな兄と付き合うようになり、誰も自分のことを理解してくれないとグレてしまう主人公。そんな彼女の周囲に対する過剰な繊細さ故の自閉的でア>>続きを読む
冒頭、高齢の父親が入居している施設に手土産を持って訪問する光石研演じる息子が、おそらく父親に向かって声をかける。だが、視線の先にいるであろう父親をなかなかカメラは映さない。そして横並びになった父親と息>>続きを読む
ティーンの甘酸っぱい初恋物語に逃げることなく、ユダヤ教とキリスト教の宗教の問題や、少女の身体の変化といったセンシティブな内容に斬り込む勇敢な脚本が見事な秀作。特に日本人だとピンと来ない宗教との距離感に>>続きを読む
ウルトラマンや戦隊ヒーローといった特撮もの、あるいはエヴァやガンダムといったロボットSFものへの愛とオマージュが炸裂するバトルシーンの圧倒的な熱量と、文化祭と期末試験を間近に控えた学園ドラマの少し冷め>>続きを読む
とにかく物語構成と脚本の映画だ。同じ事象でもそれを見る人間によって別の景色が出現する様を、時系列を絶妙に行き来しながらも全く混乱させることのないストーリーテリングは驚異だ。
幾多の異なる角度から物語>>続きを読む
冒頭から悪魔祓いとしてのラッセル・クロウが悪魔に取り憑かれた青年と対峙する。ここで例えば十字架や聖水といったアイテムを使用するのではなく、サタンの頭に血を上らせるような言葉で挑発し、豚に取り憑かせて射>>続きを読む
冒頭のタロットカード占いの場面から痺れる。俯瞰したキャメラは、カードをテーブルの上に並べ表にめくる手だけを画面上にカラーで映し出す。その惚れ惚れするような手の動きの間に、クレオと占い師の表情をモノクロ>>続きを読む
まず漁村の風景とそこに息づく人々の様子の切り取り方が見事。キャメラがどんどん家の中へと入っていき、人々のを次々に映していく。そこにプライベートな空間はほぼなく、敷居をまたぐといった概念もなさそうだ。随>>続きを読む
男女3人によるダム破壊というエコテロリズムを描いた本作は、その計画を実行に移すまでの過程を丁寧に描きつつ、実行後にそのテロ行為を批評的に解体するところからが肝となる構造になっている。
ダムを破壊する>>続きを読む
日本が敗戦を迎えた後もシベリアに抑留された日本兵たちを描いた本作は、戦前と戦後で変わらないもの、変わってしまったもの、変わってほしいと願うものを、回想場面や家族を日本で待つ者たちを描写しながら浮かび上>>続きを読む
本作はアクションの映画だ。移民としてアフリカから渡ってきたトリとロキタは、生きるために、そして家族を生かすために常に動いている。麻薬を売り歩く裏の仕事を任され、危険な場所へも躊躇なく歩を進め、大人に舐>>続きを読む
実在の人物であるスティーブン・ミークに着想を得た本作は、砂漠の真ん中で確信もないまま彼に導かれ、路頭に迷うことになった女性も含めた一団の、背景の大自然と対比されるようにちっぽけな不信や疑念が拡大するさ>>続きを読む
住所も電話番号も金も職もないウェンディ。そんな彼女が唯一所有している車や愛犬さえも手放すことにならざるを得ない状況に至るまでの葛藤や苦悩に胸が詰まる。そしてミニマムでシンプルな物語でありながらも、どこ>>続きを読む
本作は旧友が一泊二日で山奥の秘湯でひとっ風呂浴びて帰ってくるシンプルなロードムービーである。だが、冒頭で主人公がもうすぐ父親になる状況で、身重な妻に一応エクスキューズを取ってから旧友と旅行に出かける場>>続きを読む
本作は70年代アメリカン・ニューシネマの匂いを強烈に漂わせながら、あくまでも物語の主語となるのは女性だ。ひとつの拳銃をめぐって犯罪に巻き込まれ、男女で逃避行へと展開するものの、拳銃を紛失した追っ手側で>>続きを読む
冒頭より陽子の生活っぷりが映し出される。ネットで日用品を注文し、必要なものは検索し、分からないことはチャットでやりとりし、タブレットで動画を楽しむ。声を出さずとも、他人を頼らずとも、家の中で自力で生活>>続きを読む
ひと夏のバカンスを過ごす娘と父親。そのひとときを当時の父親と同じ年齢となった現在から振り返る、いまや母親となった娘。ビデオカメラを巻き戻しするという行為自体がノスタルジックであり、そのテープが巻き戻さ>>続きを読む
ベルリンの都市の変遷を展示した模型や、水槽の中の潜水士の人形がキーとなり、男と女が出会って恋に落ちている気持ちは確かではあるが、ふたりが過ごした時間がまるで手から水がこぼれ落ちるように消えてなくなる感>>続きを読む