りっくさんの映画レビュー・感想・評価 - 4ページ目

スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース(2023年製作の映画)

4.2

前作の登場は、その後のアニメーション表現を「スパイダーマン:スパイダーバース」以前と以後に分けて語らないといけないような、そんなエポックメイキングな作品だったと改めて思う。

だが本作を観てやはりすご
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ブラックベリー(2023年製作の映画)

4.3

黎明期の携帯電話業界の熾烈な競争を描く本作は、まず冒頭の人と人が繋がる可能性についての実際のスピーチによって、コロナ禍を経験した今だからこそ本作を作る意義をまずは表明してみせる。

そこから描かれる物
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チキンラン ナゲット大作戦(2023年製作の映画)

3.4

養鶏場から脱出しユートピアを目指した前作とは対象的に、本作は大人が信じたユートピアから脱出した子供を救うために、大人が養鶏場に侵入するという物語だ。まるで刑務所のような養鶏場もハイテク化され、また新た>>続きを読む

終わらない週末(2023年製作の映画)

3.5

地球規模の危機が迫っているであろう状況に置かれた人間たちの寓話は、テクノロジーに依存しすぎた人間たちに対する悪夢的な警鐘であり、テクノロジーは信用するくせに、人間に対しては嫌悪や不信感を抱いている状況>>続きを読む

エゴイスト(2023年製作の映画)

4.4

本作は同性愛者の物語であるものの、ヒリヒリとした痛みを伴って画面に刻まれる、人間として生きることの喜び、悲しみ、苦しみ、そして愛。そのような感情が鈴木亮平の肉体を通して観るものに痛切に迫ってくる。>>続きを読む

チキンラン(2000年製作の映画)

4.0

そこかしこに脱獄映画の名作「大脱走」のオマージュが散りばめられつつ、戦時中のイギリスとアメリカの関係性まで物語に落とし込み、あの塀をみんなで飛んで乗り越えるというシンプルな目的のために奮闘する姿は、ス>>続きを読む

グランツーリスモ(2023年製作の映画)

3.7

実話をベースに、事故の場面などはより主人公の心の葛藤や障壁とそれを乗り越えるカタルシスが分かりやすいよう時系列を若干入れ替えることで、ドラマとしてまさに王道の物語となっていてとても見やすく手際が良い。>>続きを読む

ロストケア(2023年製作の映画)

3.2

介護殺人を題材にした社会派サスペンスである本作は、訪問介護士と検事がそれぞれの立場や生きる世界から、追い詰められた人間を救うための死についての見解をぶつけ合う。そこから綺麗事を剥ぎ取った形で現実社会の>>続きを読む

#マンホール(2023年製作の映画)

3.2

ほぼマンホールに落ちた空間で展開されるワンシチュエーションものである本作は、
電話やSNSを駆使して外界へ助けを求め、または外界からの流出物によって危険にさらされる。そういったある意味定石の要素を的確
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ほつれる(2023年製作の映画)

4.0

「私達はおとな」に続き、加藤拓也はよくもまぁ暴力を直接描かずに男の暴力性を描けるもんだと感心する。もはやコイツとは同棲したくない男のヤダ味の博覧会のような趣さえある。しかも前作は言葉の鋭利性で相手を完>>続きを読む

正欲(2023年製作の映画)

4.5

「市子」「月」もそうだが、本作も含めて最近の日本映画の大きなテーマとなっているのが「他者への想像力」だろう。相手を思いやり、尊重し、理解しようとするずっと手前の、相手の気持ちを考えることすら放棄し、自>>続きを読む

市子(2023年製作の映画)

4.5

青い海に青い空、そこにかかるきれいな虹。それは幸せの象徴のように一見思えるが、きっと明日はいい天気と歌う杉咲花のか細い声は今にも消えそうだ。虹はそのひとときは幸せの象徴であるかもしれないが、すぐに消え>>続きを読む

(2023年製作の映画)

4.3

近年の石井裕也の映画は、まさに映画は社会を映す鏡だという言葉通り、現代日本に蔓延る空気を、現代に生きる映画作家としてどのように対峙するかという挟持や覚悟をひしひしと感じる。それにより客観性と主観性が危>>続きを読む

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)

4.0

横溝正史的な日本のムラ社会の反吐が出るような悪しき因習と、戦後復興や高度経済成長を遂げた歴史の影でアジア太平洋戦争以来何も変わっていない大義のための犠牲という弱者切り捨ての腐った日本の体制を、妖怪怪奇>>続きを読む

(2023年製作の映画)

2.8

人生なんて所詮遊びで、だからこそ遊んだもん勝ち。人生なんてしょーもないから、人生期待しただけ無駄。そんな虚無感の中で打ち上がる花火のような虚しさが北野映画にはあるが、超豪華戦国絵巻のような見てくれの本>>続きを読む

TAR/ター(2022年製作の映画)

4.3

トッド・フィールドという寡作の天才は、常に世の中の常識や倫理観を揺さぶってきた。「イン・ザ・ベッドルーム」では不倫、「リトル・チルドレン」では小児愛者、そして本作ではパワーハラスメントやネットリンチに>>続きを読む

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3(2023年製作の映画)

4.5

3部作が完結して改めて思うのは、本作はMCUの中で最高のシリーズだったという感慨だ。フザけたノリで進むからこそ、説教臭さや価値観を押し付けるような、メッセージ性が強すぎて辟易するような、そんな事態を軽>>続きを読む

ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!(2023年製作の映画)

3.3

最近のアニメーションの潮流の一つである(劇場版「クレしん」では初期からやっているが)、全体のタッチを統一させるのではなく、勢いのある展開やアクション場面では劇画調に転調するという大胆なタッチの跳躍が全>>続きを読む

最後まで行く(2023年製作の映画)

4.0

基本的には巻き込まれ型サスペンスではあるが、常にアタフタしている岡田准一と、鉄仮面ではあるがどこか詰めが甘い綾野剛の過剰なコミカルさを引き出し、銃撃戦やカーチェイスなどのアクションも盛り込んでみせる。>>続きを読む

キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩(2021年製作の映画)

3.9

歌は時代や国境を超えると言うが、本作は「キャロル・オブ・ザ・ベル」というウクライナ民謡を中心に据え、この歌によって不快に思っていた者同士が心を通わせ合い、あるいは憎しみの対象である相手との距離が近づき>>続きを読む

ひらいて(2021年製作の映画)

4.1

映画の主軸となるのは進学を控えた高校三年生の三角関係をめぐるラブストーリーである。だが、星の数だけあるような設定を、決して説明台詞ではない、台詞があったとしてもそれが本心であるか分からない含みのある演>>続きを読む

コンパートメントNo.6(2021年製作の映画)

4.0

寝台列車の同部屋で出会った男と女。初対面の印象は最悪だったが、徐々に男の不器用だが正直な純情さに惹かれ、最後に劇中で初めて女は心から笑う。これは日本の学園ものなどで大量生産されている、紛れもない王道ロ>>続きを読む

聖地には蜘蛛が巣を張る(2022年製作の映画)

4.0

本作は娼婦たちを狙った実際の連続殺人事件をベースに構成されているものの、主軸は真犯人を暴くミステリーではない。早い段階から犯人は明かされており、事件の真相に迫る女性ジャーナリストは犯人よりも、イランと>>続きを読む

マイ・エレメント(2023年製作の映画)

4.0

まさにピクサー版「ロミオとジュリエット」の趣で、最高のラブストーリーだった。アメリカンドリームを求めて海を渡った移民2世の物語でもあり、保守とリベラルの家系の物語でもある。

他者への恐れや憎しみを起
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ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE(2023年製作の映画)

3.8

二部作の前編ということで、とにかく登場人物が多く、各々の私利思惑が入り乱れるため、脳をフル回転させなければなかなかついて行けない。鍵を2つ揃えるというシンプルな物語でありながらも、その鍵を一体何のため>>続きを読む

ニモーナ(2023年製作の映画)

4.2

画の動かし方や様々な動物に変身しながらのドタバタ痛快アクション、バディムービーとしての魅力、女王を殺して血縁ではなく現場叩き上げの王位継承者に容疑者に仕立て上げようとした犯人を巡るミステリーと、まずエ>>続きを読む

ラスティン:ワシントンの「あの日」を作った男(2023年製作の映画)

3.2

キング牧師を中心とした、かの有名なワシントン大行進。人種差別撤廃を求める歴史的なデモの影の立役者である黒人であり同性愛者であるマーティンに本作は焦点を当て、新たな視点から歴史を振り返ろうとする。

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ライ・レーン(2023年製作の映画)

3.6

トイレの各個室での人間模様を俯瞰しながらスクロールしていく演出から、この新進気鋭の監督は自分だけのスタイルを持っていることが分かる。そして、それはオシャレで奇を衒っているのではなく、男と女の2人だけの>>続きを読む

エンパイア・オブ・ライト(2022年製作の映画)

3.2

映画とは光と闇の芸術だ。1秒に24回、光と闇が反転し、静止画に命が宿り幻影を見る。大林宣彦は光の点滅だけではなく、闇の部分に観客は各々の想いを込めるからこそ、映画は私的なものであり、そこではじめて映画>>続きを読む

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)

4.5

とても面白かった。マーティン・マクドナーならではのブラックコメディでありながらも、後に引けなくなった意固地な八の字眉毛と真一文字口の仲違いは、離島に住む身としてはとても他人事とは思えなかった。それは、>>続きを読む

愛にイナズマ(2023年製作の映画)

4.1

石井裕也が現代の社会や業界の風潮に皮肉ではなく、怒りの拳を振り上げて一石を投じた一作。全てに意味や理由を求め、フォーマット通りに物事を進めることを強い、自分の想像の枠外のものを忌み嫌い、都合のいいよう>>続きを読む

ザ・キラー(2023年製作の映画)

4.0

冒頭より孤独な殺し屋のルーティーンが、過多なモノローグに乗せて映し出される。周到な準備をし、偶然に頼らず予測をし、ひたすらその時を待つ男。だがここで面白いのは、自らの殺し屋稼業の美学的なものをやや自己>>続きを読む

キリエのうた(2023年製作の映画)

4.3

本作は岩井俊二という映画作家の、特に「リップヴァンウィンクルの花嫁」「ラストレター」といった3.11を期に、震災後の日本とフィクションの関係性を見つめ、故郷が被災地になった自らが映画でどのように震災と>>続きを読む