おか

THE DAYSのおかのレビュー・感想・評価

THE DAYS(2023年製作のドラマ)
5.0
あの大変な状況の中、日本を守るために命懸けで戦って下さってたなんて知らなかった。
それぞれ家族があるし、自分の命だって1番可愛いはずなのに、日本の未来のために死を覚悟で原発の暴走を止めようと戦って下さってた。
感謝してもしきれない。



原子炉の冷温停止に向けた作業は4月になっても依然として続いていた。
3月11日から命を懸けて戦った者たちは、ひと月経っても休息を摂れずにいた。心身ともに疲労は限界を極め、みんな血尿が出ても驚きもしなくなっていた。

そもそも始まりはなんだったのか。
1950年代、第二次世界大戦の敗北を乗り越え、空前の高度経済成長を邁進する日本は、大量のエネルギーを必要としていた。
核燃料であるウラン235、1グラムが生み出すエネルギーは石炭3トンに匹敵する。実に300万倍のエネルギーのかたまりだ。
右肩上がりの成長が、永遠に続くと信じた日本国民は、この未来のエネルギーに希望の光を見た。

私たちは丘を崩し、海に防波堤を沈め、福島県浜通りの自然豊かな土地を切り開いて、原子力発電所を築いた。未来のエネルギーを生み出す発電所を。
それから40年後、私たちは今度はその発電所を解体する日々を送っている。建設当時、誰が思い描くことができただろうか、未来のエネルギーを生む希望の発電所をこんな風に壊す日が来るとは。そして、それにかかる年月は30年とも40年とも言われている。

水素爆発で散乱した瓦礫は高線量の放射線を発し、人間の行く手を阻む。今もまだ手付かずの核燃料が原子炉の中には残されている。
冷却機能を失った際、高熱を発する核燃料は自らを溶かすと同時に、原子炉そのものを溶かし、混ざり、炉の下部に堆積した。
「燃料デブリ」と名付けられたその放射性物質の総量は数百トン、人はもちろん近付けない。そればかりか、凄まじい放射線はロボットで中を覗き見ることさえ許さない。
推定される放射線量は、毎時70シーベルト。70ミリシーベルトではない、70シーベルトだ。
ある研究によれば、広島の原爆では爆心地から1.5km地点の放射線量が、1シーベルトと言われている。2号機の格納容器内に1時間留まれば、その70倍の放射線を浴びる計算だ。
最近ようやくデブリを動かせそうだということが分かった。だが、まだそれだけだ。取り出す方法も保管方法も分からない。

廃炉作業はいつ終わりを迎えるか分からない。
福島県浜通りの人々は、住み慣れた家を捨て、故郷を離れることを余儀なくされた。11万7000人が故郷を離れ、数万戸の家が空き家となった。
家畜たちは主を失い、程なく全滅した。一方で野生動物たちは、生き生きとし始めたように見えた。彼らは、1966年の原発建設開始以来、人間に奪われてきた縄張りを取り戻した。四十数年前、私たちは山を切り崩し、海にコンクリートの壁を築き、野生動物から住処を奪った。
今度はその人間が、住む場所を失っている。

車が減り空気が綺麗になったせいだろうか、夜は空が澄みわたり、星が以前よりも美しく輝いている。
私はふと思う、かつての福島の姿に戻ったのかと、いやそうではない。巨大な負の遺産が横たわっている。
かつて私たちが明るい未来と呼んだ巨大建造物は、これから何十年にも渡り向き合っていかなければならない負の遺産となった。

自然の前に人間は無力だ。
美しい福島の空を、海を前に私たちは今日もあくせくと自分達がまねいた負の清算をしている。
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    ドラマ好きな人 1番好きなドラマは「透明なゆりかご」 0.5刻み評価、3が普通