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Four Daughters フォー・ドーターズのきのレビュー・感想・評価

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記憶の再生、「呪い」の根源

第76回・2023年カンヌ国際映画祭最優秀ドキュメンタリー賞受賞、第96回・2024年アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞ノミネート。『皮膚を売った男』(21)のカウテール・ベン・ハニア監督の最新作。長女ゴフランと次女ラフマが過激派組織IS(イスラム国)に参加するために失踪したことをきっかけに有名になった母オルファを中心に、映画は、残された母とふたりの姉妹、三女のエヤと四女のテイシール、そして失踪したふたりの姉たちを女優が代演するかたちで、記憶を新たな形で蘇らせていく。カメラの前で家族は笑い、涙し、そして心の深くに封印した想いと向き合っていく…。

家族の物語を劇映画にするという制作過程を映画にした、ような構造で、ドキュメンタリーとフィクションの境界がたくみに歪ませ、映画を利用しながら枠組みを解体していた。ゴスに傾倒したゴフランを折檻した母、その様子を間近でみていたラフマ、男たちになじられた恐怖、語られるものがあまりにも生々しい。家族の過去を“演じる”という過程をとることで、支配的だった母がなぜ娘が宗教に拠り所を見つけていったのかといった疑問が浮き彫りになっていくのだが、そこであらたに見えてくるのは、家父長制のなかで虐げられた女性という「呪い」が家族の幸せを奪ったということだった。母が負ったトラウマ、そして娘たちの反抗、母娘の絆のありかを探す。代演することになった女優を観て、母と娘たちが泣いたり、昔から姉妹だったようなシーンを挿入することで演じることについて“トラウマ”をうむ可能性についても示唆されていた。
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