瀬口航平

オセロの瀬口航平のネタバレレビュー・内容・結末

オセロ(1965年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

評価低い人もいるけど、それはおそらくオリヴィエの過剰なまでの喚き声と身振りの演技だと思われる、、歌舞伎かな、って思ったもん。。見方によっては喜劇にもなりかねない。。意味のないことはしない人だとは思うんだけど、、
ただ最近マイケルケインという俳優の自伝的なもの読んでるけど、オリヴィエ氏はものすごく自分をアピールするし、目立ちたがり的なことを書いていて(本人亡くなってるからこそ書ける本音)、なるほど、、これは少しそんな風にも見えるな、と思った。

この作品は、シェイクスピア生誕400年記念の、ナショナルシアターで当時演じられていたオセローを、そのまま同じキャストで映画化した作品なのだそう。映画的な演出はほぼなく、舞台を映像化したような作品なので、1965年版ナショナルシアターライブ的な感じがあり、当時話題の舞台を超豪華なキャスティングで観られる貴重な作品ではある。若いときのマクゴナガル先生いるしね!こんなに昔から売れっ子だったのねえ。

個人的にはオセローが好きだからか、大変面白かった。
オリヴィエのオーバーアクト気味なとこ以外は良かった。
イアーゴーはやっぱり面白いな。。。下手したら主役にもなっちゃうぐらいの役だと思う。。。今回のイアーゴーは、表と裏の顔が全然違ってて、少し笑ってしまった。正直者を演じてるときのあのつぶらな瞳よ!笑 虫も殺せません私には!みたいな感じ。
オセローはけっこうメインのキャラクターたちがとても良くって、ロダリーゴーのちょっと頭が足りないけどめちゃめちゃ純粋なところとか、エミリアのデズデモーナを想う気持ちの強さとか(最後オセローに立ち向かうシーンは本当にかっこいい、、作中一番の本当の強さを持ってるのは彼女では、、?)がすごく良い。
キャシオーはそこまで魅力的に感じること少ないんだけど、今回で言うとイアーゴーとのシーンで、ハッハッハって何度も笑うとこが面白かった笑 あとデレクジャコビが演じててびっくり。あとあれだ、名誉を失った、というシーンのキャシオーが本当に地の底に落ちた感じがして、すごかった。

デズデモーナは、ああ本当に良い女性だな、という感じがとても出てた。まあそうでないと悲劇にならないんだけど。

オセローがなんでああなっちゃったんだ、、ってみんな言ってるけど、周囲が持ち上げすぎなんじゃないか、と思う。
彼は生粋の軍人で、そういう男社会や戦いの世界でずっと生きてきて、そしてその世界では軍神レベルの存在だったろうけど、色恋関係はほとんど経験してこなかったのかもと思う。
やたらと自分は無敵だという肯定感だけがぶち上がった結果、デズデモーナなんていうとっても素敵な女性と結婚できたけど、針でつつけば崩壊してしまうぐらいの脆さを可能性として秘めていたのかも。むしろそういう人間だからこその脆さ。

イアーゴーに関しては、副官になれなかったことや、オセローに自分の妻を寝取られた可能性、キャシオーの自分の妻への扱い方、あと差別意識も強そうだから黒人である人間にそんな扱いをされたことへの屈辱、あとちらっとだけど、デズデモーナに気がある的なことも言ってるから、黒人のくせに!的なもの等なども動機としてあるように思う。
いっぱいだな動機笑

個人的には昔ナショナルシアターライブで観たオセローで、オセローが殺しをしようと言い始めたところのイアーゴーが事件として受け止めている解釈(殺しまでは考えていなかったということ)が好きだった。でももう止まれないから突き進むしかなくなるという悲劇感がある。
今回はそれはわからなかったな。

自分の仕打ちがバレてから、もう話さないとなるシーンも良い。シェイクスピア天才。。あんだけ話してた男が、最後ほとんど語らなくなる。観てる方としては、さっきまでのように話してほしいと思うんだけど、急に話さなくなるからイアーゴーの内面がめっちゃ気になって終わるんよね。これすごい。上手い。

色恋関係で人殺しちゃうって、4大悲劇の中では一番現代で身近な悲劇って感じがする。リア王もそうかもだけど。
そういう事件多いよね。
多いって時点で、人類が克服できてない何かがまだあるんだと思う。だからこそ今でも上演される。
嫉妬の悲劇と言うのは簡単だけど、もう一段深いところに降りて考えてみるともっと興味深いものがあぶり出されてくるような気もする。
所有欲の話、な気もするけど、、ん〜、、わからん。。
瀬口航平

瀬口航平