10/19、Amazonビデオにて視聴。
先日観た映画の作品ページ内のおすすめ欄になぜかブチ上がっていたので観た。ここのところ、「性!」みたいな作品ばかり観ていたので、なら単刀直入にそこに突っ込んでいこうじゃねえかというので。あと、割かし昔からAV界みたいなものには多面的に興味があったので、それもある。
作品制作当時は月に数千本単位で新作が世に放たれていたAVの世界において、女優サイドは数も万単位で夥しいく存在するのに対し、男優サイドは70人のみという状態にあった(※ただ、これは多分、本職的に恒常的にAV男優をやっている人数のみをカウントしているんだろうなあと思うけども、そうであったとしても女優と男優の数のアンバランスさはそれはそのとおりだと思う)。つまり彼らは日々、間断なく撮影数をこなしていかなければならない状況にあったのである。本作はその男優たちのさらにトッププレイヤーと言える有名な面々且つ80年代から発生して90年代には一般化していったそのAV界の草創期の頃(特に90年前後から)この世界に居る重鎮たちを取材対象とし、彼らへのインタビューをまとめたものとなっている。だから全体的に、昔はこうで今はこうみたいな話が多かったりする。
合間合間に彼らの出演作の一部が挟まれる上にEDでも喘ぎ声がミックスされているのもあって、なんか、印象としては、やたらと喘ぎ声を聞いたようなものが強い余韻であった。
全体的にドキュメンタリーとする上で作品としての芯が持たせられないまま、ただインタビューが並べられていた感じだった。インタビュー内容に対する構成も痒い。話を聞いてるだけみたいな。皆さん一様にプロ意識はあるけど、それぞれ考え方とかだいぶ違うんだなあみたいなのを観る感じ。考え方は違いがあってもその世界への入り口はおおよそ似通っているのだけども(究極的にはその当時、自分がジリ貧だったから参加したみたいな)。正直、こういう、男優たちに迫るみたいなものは既に世の中に記事や書籍の形でもあるので、そちらのほうが十分に満足できるものになっていると思う。ただ、男優たちが映像上で受け答えをしている、同じ質問にそれぞれにどう答えるのかが並べられているという点においては面白いところはある作品だとは思う。男優ってあくまで直接のプレーヤーサイドだと思うから、こういうのの監督版みたいなのもあれば気になる。
撮影現場って割とそこで設定されているシチュエーションがうまくいかないときに発生する泥沼(=撮影ができなくなる)みたいな話は私でも幾つか見聞した覚えがうっすらあったりもするのだけれど、そういう齟齬みたいな話は全くされてなかった。女優サイドが無理だと思う攻めを受けて嫌な思いをしたとかそういうのも。男優サイドも恐らくあっただろうそういう話もしない(例えばスカトロどころか食糞とかにしたって結局自分がすることを受け入れた上での話をしている)。
あと、父親もAV男優だったから友人にそのこと触れられたこともあったとか、たぶんこの女の子は嫌嫌(この仕事を)やってるんだろうなというのが分かるとか、男優辞めますをしたところでこれまでの活動が世の中から帳消しになるわけではない(=自分のセックスはいつまでもどこかに映像として残り続けてしまう)とか、そのへんもっと切り込んでもいいのではみたいなのもさらっと流していく。
デビュー当時の金欠状態には触れても、現在トッププレイヤーとしてなかなかもなかなかの稼ぎはあるはずのところには触れなかったりとか、そういう、何がしたいねんみたいな構成がひたすらでもあった。忙しなく働かねばいけない分、毎日仕事関係に対する時間の消費も激しい状態にあるだろうから、彼らのその仕事外のところで何をやっているのか、何ができるのかとかも触れても良かったと思うのだけれど、そういうのもしない。一応、オフでの恋人との関係みたいなのは触れるけれども。これに関しては一様にオンオフの切り替えが大事だし、それができないと(そもそも特別な相手でもない女性とセックスしなければならない)この仕事ができなくなるみたいな返答をしている方が多かったりしたのもそれはそうって話ながらも印象的ではあるのだけれども。
作品中でも、近年の作品傾向みたいな話があって、円盤化で一気に尺も伸びたとか、テクニカルみたいなのが優先されるようになったとかいう話も、そういう撮影の外側のところとかについて男優目線で触れられたりもしていたけども、年々めたくそテクニカル重視になっていくところがあるみたいなの、割といろんなクリエイティブに通じてそうな話でもあるのではとか思ったりもした。
愛はなくてもセックスするというだけなら別にできるし、やらないといけない相手が好みでなくても(プロなのでなおさら)すぐに勃起もする。それはそれとして近年はどんどん女優の人となりに触れる機会が撮影時間内に感じるくらいしかないし、とはいえ、相手のことを考えすぎると常識的な性のモラルの考えが「仕事である」を追い越してしまったりもするから、なんでこんなことしてるんだろうとさえ思いもする。とはいえ、男優でなくても、恋人と想いを通じ合うようなセックスをするのもいいし、好きでもない女と乾いたセックスをするのだってどちらだってセックスとしてあってはいいよね(※もちろん、レイプなどを肯定して言っているわけではない)みたいなところに恐らく話をまとめている感じだった……のか?
セックスってそもそもそんな高尚なもんじゃない(からそんな禁忌的に聖域化するものでもないけど)、その先に恐らくあるだろう「幸せ」のためツールでしかないのに気持ちいいからむちゃくちゃになっちゃったりもするんだよねえみたいな話が特に本作の中では印象的だった。