全体的に、提起された問題がぜんぶ放ったらかしのまま終わっちゃったような。宇宙世紀の節目とか、パラダイムシフトとかをずっと強調してきた割に、強化人間が絶対酷い目に遭う宿命とか、コンサバティブな性役割とか、何も変わらないどころかエモーショナルな演出のために生命が消費されて、主人公の葛藤も激情も過去シリーズで何度も見たものとそう違わず…という印象で、なんかスゴそうな設定が先行してたけど、普通のガンダムだな、それどころか何だか無邪気で、2010年代にここまでの規模で制作流通されたにしては後退してるんじゃないかな…と思った。
「そんなんで抱けんのかよー!」にはさすがにドン引きした。あんなにはっきり“男性の論理”みたいな言葉を賢しらに持ち出しておいてそれはない。サイド共栄圏とかサイコフレームとか、ラプラスの箱も、もっとSF的に政治シュミレーション的に掘り下げたら面白そうだったのに、主人公の感情に寄り添いすぎ(て周辺キャラまでなおざりにし)てしまう印象だった。設定としてそこまで高らかに言葉に形にするのであれば、肝心の「それでも」のその先を描いて欲しかった、節目を謳う、原作とは別の世界の作品だからこそ。でないと次の100年も分かり合えないままでは?初代のテーマを継承とか言っている場合ではない、全て壊せ、変えてしまえ、「足踏み」のその先をそろそろ見せてくれ。