“シガテラ”という毒がある。
これは大きな体を持つ肉食の魚に発現する毒であり、バラフエダイやオニカマスといったあまり聞き馴染みのない魚から、ヒラマサやブリなど、食卓には定番の魚であっても、この毒を保有する恐れがあるようだ。
ブリの毒なんて聞いたことが無い。
そんな声が聞こえてきそうだが、この毒は面白いもので、同一種であっても保有する個体とそうでない個体が混在する。
つまり、この毒は特有の種が持つ生来のそれではなく、食物連鎖の末に後天的に発現する毒なのだ。
微量の毒をもつ植物やプランクトンを摂取した魚が捕食され、その魚をさらに大きな魚が捕食する。これが年月を経て毒は蓄積され、生物濃縮は進み、最終捕食者であったこの魚を口にした運の悪い人間が、毒に苦しむのだそうだ。
ホラー作家である「私」のもとに、1通の手紙が寄せられたことで物語は始まる。
1人の女学生が住むマンションの一室で、不可解な現象が起こるという。
調査を進むにつれ、土地にまつわる悪しき歴史が紐解かれていく。
いたずらに怖がらせるような演出は少ないけど怖い!
要所要所ででおぞましい事実が小気味良く、もとい薄気味悪く明らかになっていくんだけど、ロジカルに解明しようとしていくところが怖いっていうだけでなく個人的に好き。
そして、オムニバス調でもあり一貫して物語が進んで(遡って)いく構成も素晴らしい。
群像的な怖さが襲いかかってくるこの感覚。紛れもなくJホラーの名作。
穢れ
人の狂気や悪意のこもった怨念は、月日と共に、その地に蓄積されていく。
それは不条理に、あるいは不運にも、ある日誰かの身に降りかかる。
「辿っていくと 根はおなじ」