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アトムの童のmichikoのレビュー・感想・評価

アトムの童(2022年製作のドラマ)
1.5
ゲーム業界が舞台のドラマと聞いて視聴したが、どちらかというと銀行融資や企業買収合戦がメインであった。下町の老舗オモチャメーカー「アトム玩具」とその技術目的で買収しようとする巨大IT企業「SAGAS」の生き残りをかけた闘い、そして天才ゲームクリエイター「ジョンドゥ」のメンバーとSAGAS代表との過去の因縁の物語であった。
ゲーム業界の働き方や業界あるあるを知りたい場合は実際のゲームデベロッパーであるサイバーコネクトツーが舞台となっているドラマ『チェイサーゲーム』の方がリアルであり楽しめるだろう。

本作で扱っているテーマは子供とゲームの関わり方、社会問題の解決を主目的とするシリアスゲーム、オリンピック種目となり得るe-sports、など今の若者にとっては当たり前で今更な内容が多く、ゲームにあまり詳しくない年代がターゲットの様に思われる。それもあるせいか、作内に登場するゲーム画面はお世辞にもインディーゲームとしてもクオリティが高いとはいえず、作品のリアリティを損なわせる。(唯一、実際に存在するゲーム『Downwell』が作内で使われるが)
また、最も熱く語られていた“日本の技術の保全”に関してはそれを表す「アトムロイド」という技術がモデリング技術なのかアニメーション技術なのか結局どういうものなのか明確な説明がない為、やはり買収合戦の価値や重要性も伝わってこない。
そういった細かい点でのリアリティさや設定の肉付けがもっとしっかり描けていたら、全体の印象も変わってきたのかもしれない。

驚いたのがSIEの吉田修平氏がカメオ出演していた事。また、SAGAS代表を演じたオダギリジョーが実は香川照之の代打であったこと。信念と冷酷非道さを合わせ持つ非常に魅力的な役に適任であった。あと松下洸平の飄々とした独特な演技もクセになった。
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