MasaichiYaguchi

浜の朝日の嘘つきどもとのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

浜の朝日の嘘つきどもと(2020年製作のドラマ)
3.7
福島中央テレビ開局50周年記念オリジナルドラマは、同様に記念作品として製作された劇場版のラストから繋がるような形で物語が幕を開ける。
尾羽打ち枯らした映画監督・川島健二は呆然とさまよい歩き、「死ぬ前に好きだった映画でも観よう」と南相馬市の古びた映画館・朝日座へ辿り着く。
そこにいたのは来場した客から入館料をくすねるモギリ嬢の茂木莉子と、お喋り好きな支配人の森田保造。
2人は死にそうな川島を強引に映画館の臨時雇いとして働かせ、しばらくこの街に滞在するように仕向ける。
そんな或る日、「この街で悲惨なドキュメンタリー映画を撮りたい」と言う、もう一人の映画監督・藤田慎二が現れる。
この“炎上上等”の監督・藤田の登場で物語は本格的に動き出す。
川島と藤田という2人の監督は対照的だ。
川島は商業映画を撮ったものの、評判は最悪で立ち直れない程ダメージを受け、お先真っ暗な状況にいる。
藤田はドキュメンタリーを撮っているが、その偽悪的なアプローチで炎上商売監督として有名で、彼は、東日本大震災に2019年の東日本台風被害、さらに新型コロナウイルスの蔓延と、立ち上がろうとする度に押し寄せる新たな苦難の中にある南相馬市の人々を映し、それを世界に発信して名を馳せようと考えているが、先立つものが無くて苦戦している。
そんな或る日、川島に金持ちの未亡人・松山秀子から「この街のためになる映画を作ってほしい」と声を掛けられる。
諦めた夢と折れたプライドがうずく川島は心が揺れ動く中、新作を撮ろうとプロットを練り始めるが…
劇場版では、コロナ禍における映画や映画館が、如何に人々を癒し、励ます存在なのかを描いたが、テレビドラマ版では、それを製作する側の「生みの苦しみ」を描いていると思う。
特に南相馬のような復興途中の被災地を題材にした場合、本作自体にも通じることだが、どういう意図で、どう描くのかということを問い掛けているような気がする。