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母性のGODZILLASAURUSのレビュー・感想・評価

母性(2022年製作の映画)
3.5
「観る人の境遇にものすごく左右される」

ネタバレあり


母性というタイトルなので観る人の男女はもちろんのこと、母親とどういう関係で育ってきたか、祖母とは、と観る人のそれまでの境遇にものすごく感情を左右される作品だと感じた。
さらに、自身が子供のころに親や周りの大人たちの顔色をどれほど伺うタイプだったかでも、感情移入の度合いが変わるだろう。
私は、母親との関係が良好で愛情を感じて育ち、周りの大人たちの顔色をあまり伺うタイプでもなかったので、鑑賞中は良くも悪くもフラットに観れた。
フラットに観ると、一種のサイコサスペンスの匂いがする人間ドラマ作品という感じ。同じ時間軸で母から語られるパートと娘から語られるパートに分かれており、それぞれで同じ物語の流れなのに両者で見ているものが全然違うところは面白い。
個人的には、サイコモノが好きなのでバッドエンド的なものを期待したが、母性というテーマで語るにはやはりそうはいかなかった。

愛してると言って抱きしめる。愛してると言いながら首を絞める。母と娘それぞれでここまで見えている世界が違うのかとゾッとしたシーンが本作の見どころ。

憑依系演技の2人も見どころ。
戸田恵梨香演じる母のサイコパス感はかなりやばい。もともと痩せているのにさらに減量したか? 眉薄のノーメイクっぽいメイクが幸薄感を強調し、サイコパス系母としての魅力は高かった。
同じく高畑淳子の義母の嫁イビリの強い厭なやつ演技もすごく良かった。厭なやつ感を全面に押し出してからの、娘家出後のやつれ感が際立っていた。
逆に、永野芽郁と大地真央は役者のパーソナリティを押し出した演技で雰囲気は他作とそれほど変わらないが、役柄とマッチしていて悪くなかった。
憑依系と個性重視系の2つの演技を楽しめる作品である。

フラットに観たせいで、母性という本作での最重要ポイントを考えさせられることがそれほどなく、なんとなく「母性」、「母と娘」というワードを投げつけられて終わって気がして残念であった。

はたして母性は本能か?それとも経験により後天的に得られるのか?
私は前者だと思うが、いかに。星3.5
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