ユーライ

フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)のユーライのレビュー・感想・評価

5.0
フランケンシュタインの造形には、表象として怪物の意匠を纏った怪獣とは異なる、生理的嫌悪を呼び起こす要素に満ちている。垂れ目、ガチャ歯、不潔な恰好、半開きの口から出るのは譫言ばかり。これ即ち我々が日常で目にする「やべー奴」の特徴そのものであり、ちょっと言い逃れの出来ない迫力を感じるのだ。彼を匿う科学者三人はあくまでも良識に基づく頼もしい現代人だ。しかし動向一つで「保護すべき」「殺すべき」と意見をコロコロ二転三転させる様相は、とてもじゃないが存在理由すらままならぬフランケンシュタインの切実さには全く寄り添えていない。着せられた濡れ衣を晴らすべく一人孤独に戦い、見事バラゴンに勝利するも、中道だったはずのボーエン博士は「所詮彼は怪物だ」と呟く。誰からも石もて追われる異端は、救われることなくただ死にゆくしかない。散々させた感情移入をぶった切り、酷薄な現実を容赦なく突き付けてくる。この安っぽいヒューマニズムを超えた透徹した眼差しには、そんじゃそこらの映画が束になっても敵わない。何処ともなく去っていくフランケンシュタインが上げる咆哮は、全ての被差別者の怨嗟だ。素知らぬ顔のお前も、お前も、お前も、生きとし生きる者全てが罪人なのだと問うてくる。これが文明社会ってわけか!都市生活は弱者を見殺しにするところからはじまるってことかい、は!タコはいらないと思いました。
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