きゅうりぼーい

ショーイング・アップのきゅうりぼーいのレビュー・感想・評価

ショーイング・アップ(2022年製作の映画)
4.0

〝私〟の世界と
〝私たち〟で生きていく社会の狭間。

思い通りにならない人生(=陶芸)の物語が、想像を創造し、〝私〟を事物化していくアーティストの日常を通じて描かれていく。

〝生き物〟に悩まされ〝生き物〟が丸く収めていく物語の運びの過程で、
私たち人間もまたヒトという〝生き物〟であること、その一つ一つの行動、言動もまた捉えようのない自然現象であることをまざまざと感じさせる本作は、テイストは変われどケリーライカートが描いてきたこれまでの作品との繋がりをどこか感じてしまう。

社会的であり生物的な。
意識的であり無意識的な。
具体的であり抽象的な。
人間とヒトの狭間のジレンマ。

私の意識の枠の中で
枠の外の無意識の場所で

出現しては消失し
発生しては消滅していく
ヒト、モノ、コト。

猫も鳩も火もヒトも
生き物なんだから、思い通りにはならないよね。
受け入れ、寛容の先で取り戻す穏やかさ。
眉間の皺も、そっと緩んでいく。

自由を奪われたかと思いきや
もうすでに自由だったのではないか。
鳩の演出、とてもとても良かった。

去年のファーストカウに続き、新年一発目の映画館でケリーライカート最新作を鑑賞。
ある登場人物とその者を取り巻く人々の日常と生活を映し出しているにすぎないのに、淡々と進む物語の最後は毎回大きな感動と爽快感を感じる。
あっぱれだな。
きゅうりぼーい

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