きゅうりぼーい

マッチ工場の少女のきゅうりぼーいのレビュー・感想・評価

マッチ工場の少女(1990年製作の映画)
3.8

家族にも、「この人かも」と期待した男にも見放された少女は、この残酷な社会に抗い、日常の破壊へと突き進む。

労働者三部作、最後に見た本作はココではない何処かにすら行けなかった少女の悲しさ、絶望の中を生きる一人の人間の心の叫びを静かに、淡々と描いていた。

毎回オープニングで労働作業のフローをしっかり見せていくことで、虚構と現実がすごく近いところにある感覚が持てるのがとても良いし、それがあるからこそ主人公の抜け出せない毎日の苦しみがリアルに伝わる。

パラダイスの夕暮れ、真夜中の虹は〝イマ〟〝ココ〟から離れることが出来た者たちという希望を描いたのであれば
本作はイマココから離れることが出来なかったからこそ破壊という手段しかなかったという絶望が描かれていた。

共通していたのは「決断」した者たちの逞しさかなと。
だからこそ本作のラストも悲しみの中に何処か爽快感を覚えたのかもしれない。

ハーフグラスから、グラス「大」へ。
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