Yumyum

カラオケ行こ!のYumyumのネタバレレビュー・内容・結末

カラオケ行こ!(2024年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

面白かった。

ただ絵面として「ヤクザ(反社会的な犯罪者)と未成年の交流」っていう「ぜってー美談(やコメディにして搾取/消費したら)にしちゃダメやろ」っていう倫理的にアウトすぎるソレを「子どもには優しいフェアリーヤクザ(物語にとって現実には確率が低すぎてあり得ないレベルの都合のよいキャラクターを登場させることをフェアリー◯◯、という→例としてヘテロ主人公に優しいフェアリーゲイなどがある)」として「ポジティブ(及び無害)加工」して描写しちゃうのはどうなのさ?と思った。
物語の軸部分だが、そこだけが本当に嫌すぎた。
原作が漫画だからしかたないにしても(なら実写化して生々しくするよりなおさらアニメでよかったやん…実写でなく…って気持ちがめちゃ強い)
犯罪者と未成年の交流(という名の加害)を美談描写すな。

「愛は与えるものなんだ」という台詞がまさかこんなにデケー伏線になっているとはおもわなんだ。

主人公の母親が父親に、彼の好物であろう鮭の皮を自分の分から剥いで茶碗にのせる描写で主人公に映画の「愛は与えるもの」という記憶を甦らせ、ラスト、主人公が「(音楽祭/合唱祭がリミットだと言われた)ボーイソプラノ」を狂児への鎮魂歌として捧げる、文字通り「愛を与える」繋がりにグッときた。
ぼかしもしない描写や台詞まわしに脚本家の「男同士の愛情描写を、男同士による愛あるケア描写を茶化さないぞ(ホモフォビアを入れない)」という矜持に痺れた。

脚本家名みたらフェミニズムやホモソーシャル(有害な男らしさ)のテーマを盛り込んだ作品の"ど真ん中(核心を濁さず批判してくれる、差別の問題を「思いやりの問題だよ」などと耳障りのよい"おためごかし"などでまとめない等)"を描いて下さる方だったので納得。

これ男と男の話だからか、邦画特有の恋愛映画でもねーのに男女恋愛をサブリミナル的に挟む使い回された古くささがないのも良かったな。

これコテコテの邦画特有のオリジナル作品で作られてたら「男(ヤクザ)と女(女子高生)」に改編されてチープな恋愛描写入るわ、ラストオリジナルで雨の中ヤクザが主人公庇って撃たれる系のやつだから、原作者の方が改編を許さず、脚本家の方が原作の軸をぶらさず"ど真ん中"を描いて下さったのでよかったんだろうなと思った。

なにより男同士のケアと男同士の恋愛描写がめちゃめちゃ良かったな。

友愛…と記そうかと思ったが「お守りを渡す」「恋愛のこじれだと勘違いされて腹を立ててしまう」「3年間積み上げてきた事柄へのけじめをつける儀式(音楽祭)よりも狂児を優勢した」「もう一生戻らない最後のボーイソプラノを捧げる」だけでも「これが愛じゃなきゃなんなんだ?」と思ってしまうので、自分は男同士の恋愛(愛の)映画だなと思った。

海外の俳優ジュード・ロウと同じく、ブロマンスって言葉が自分は大っっ嫌いなのでこの映画はロマンスだと思ってるし、ボーイズラブだと思ってるよ。
(ジュード・ロウは映画シャーロックホームズの時、記者から「(この作品は)ブロマンス映画として話題ですね(意訳)」→ジ「どういう意味?」→記「ブロマンスというのは男同士の恋愛のようで友情のような熱い関係のことで~云々」→ジ「は?なにその醜悪な言葉、君はこの映画見なかったの?どう見ても(男同士の)ロマンス映画でしょ?」というやり取りがあった)

主人公→狂児への愛。
主人公は口ではばかすか言うが、歌のリストつくったり、(最初は適当だったのに)アドバイスしたり、お守りあげたり、めちゃめちゃ狂児のことすきなんだな、と思った。
狂児→主人公への愛は恋愛の愛じゃないといいなと思う。
相手未成年だから。
彼からの愛は保護者的な愛であればよい。
Yumyum

Yumyum