内容としては、ゲイを主人公に据えた物語が展開されるが、BL的ではない。
冒頭に関しては、人物の心情を効果的に表すため音楽が用いられるなど、アジアBLの雰囲気がある。
BLとは相容れないのは、ゲイの暮らしを生々しく描き過ぎており、エンタメになりきれていない点であろう。
同時に、ゲイの姿がオネェ言葉を話すステレオタイプに固定されて描かれており、支配的価値観から脱せてはいない。
しかし後半で描かれるのは、人を愛することのエゴイズム。
一方的に与えることで愛を示そうとする浩輔の姿への違和感。それはまさしく本人のエゴそのものであり、相手や自分が「申し訳なさ」を感じるきっかけを生み出すだけである。
それがゲイが内包してしまいがちな「生産性がなくて申し訳ない」という極めて資本主義的な感覚と接続して描かれている。