KotaSaito

怪物のKotaSaitoのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
4.0
根明な恋愛ソングとか、うさんくさい新卒採用のキャッチコピーってすぐ1+1=∞って言うじゃないですか…。
でも、1+1って∞どころか、2になるのさえ難しいなって仕事をしていると思う日々ですよ…。
しかし、これはまさに坂元裕二と是枝裕和の1+1が2であり、∞であるように感じた。

何がすごいって、やっぱり予告とかでほぼ匂わせることなく、この展開をやってのけることだと思う…。
絵本や漫画の無料公開、ライブのセットリストの事前公開…。
どんどんエンタメが確認作業と化していく世界の中で、知らない部分をこれだけ残すとは…。

もちろんこの構想を思いつける坂元裕二がすごいんだけど、多分このプロダクトを新人の方がつくれても、同じプロモーションはできなくて…。
坂元裕二×是枝裕和って話題性で十分集客ができるから、宣伝で内容に触れすぎる必要がない。
その結果、鑑賞後に良い意味で鑑賞者の期待を裏切ることができる。(その点では映画SLAM DUNKも同じ構想か)
2023年にこのような壮大な意外性に出逢えることに感謝したい。

「花束みたいな恋をした」は同じ音楽を聞いているつもりでも、イヤホンのRとLでは聞こえてるものがちがうように、同じ恋愛をしている(つもりの)2人でも感じてることは少しずつちがうというお話。
それがもう年齢も立場もちがう人たちが集まれば、もっと大きなズレばかりだよね…ってのが「怪物」かなぁ、なるほどなぁ…。

それにしても、坂元裕二は恋愛モノじゃなくても、本当にメッセージの伝え方が上手いな…。

「スキ」って伝える時に、「スキ」って書くんじゃなくて、「スキ」の文字の周りを全部黒く塗るって昔インタビューで言ってたけど、それが至る所に出てた。

何より、カンヌ受賞後の「たった1人の孤独のために書きました。それが評価されて感無量です」って言葉かっこよすぎなさい!?
俺も坂元裕二の脚本かaikoの歌詞になりたい人生だった…。
そして、俺なら「泣きました」って言っちゃうところ、「感無量です」って言えば重み出るの今年イチの学びだわ。

ただ、劇中で1番刺さったセリフは高畑充希の「男の人の大丈夫と女の人のまた今度ねは信じちゃいけないって学校で教えてないの?」だったから、やはり自分は恋愛映画向きなのかもしれない…。
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