このレビューはネタバレを含みます
寡黙な平山にかわり、生活の中で聞こえてくる音がよく届く。
朝庭を掃く音、布団を畳む音、階段を降りる音、蛇口から水の流れる音、霧吹きの水しぶき。ドアを閉める音、自販機から落ちる音‥男の日々の所作は正確で端正だった。仕事を終えて銭湯で体を洗い、街角の馴染で酒をつまんで読書で終る1日を繰り返す。
カセットレコーダーから流れる音楽が彼に代わって生きてる喜びを刻んでいた。小さな芽吹きを慈しみ、空を仰ぐ。
平山という人物をどのように受け止めるか、人それぞれ様々だと思う。
自分は途中からふと平山という人物の見え方が変わった。それまでもずっと自分に沁み込んだ衛生観念や価値観の頑なさを感じながら観ていた。妹の言葉を持っている。平山の境地に思いをはせるのはなかなかできそうにない。でもそうできたら。。いろいろな曲がり角、違う景色だったかもしれない。
